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障害がある人と自然で遊ぼう<伊是名夏子100センチの視界から>182


障害がある人と自然で遊ぼう<伊是名夏子100センチの視界から>182
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 今年の夏も山梨の湖でキャンプをし、SUPを楽しみました。わが子たちはSUPの扱いが上達し、私は座ったままで、湖の上のあちらこちらに連れて行ってくれるので頼もしかったです。車いすユーザーにとってキャンプはハードルが高いように見えますが、車いす用トイレがあるなど、車いすでも動きやすいキャンプ場も少しずつですが増えています。

 またキャンプはあえて非日常のバリアーを楽しむのが醍醐味(だいごみ)。みんなが不便さを抱えながら、お互いに話し合って、試行錯誤しながら乗り越えていくのは、障害のある人が求め続けている合理的配慮の過程に似ています。助け合えるメンバーと一緒なら、自然の中は障害があっても楽しみやすいと感じています。

 丸2日、湖でわが子と友だち家族と過ごして感じたのは、自然の遊びは完璧も正解もなく、ただただ無限だと言うことです。はじめはSUPに乗りながら大自然の景色と風を楽しみ、おやつを食べながらゴロゴロ寝てみたり。そのうちSUPから降りて水中に潜り魚を追いかけたり。揺れるSUPの上で相撲大会をして、湖にわざと落ちてみたり。湖から上がったらトンボを探したり、チップスを食べたり、火をおこしてマシュマロを焼いたり。夜は昼とは違う生き物も出てくるので、散歩をしてみたり。遊ぶためのものが何もないように見えて、次々に新しい遊びが生み出されるのです。

 遊園地はすでにある提供されたものを楽しむところですが、自然の中では自分で作り出す遊びなので、メンバーや時間、疲れ具合、天気などによってどんどん変わっていきます。湖に潜らずに車いすに乗ったままでも、太陽や雲の動きで色が変わる湖を眺めたり、虫を探したり、野菜を手でちぎって串に刺したり、火をうちわであおいだりと、五感を使う楽しみがいろいろあります。できることや楽しいことを探す、正解がない自然の遊びこそ、障害のある人も楽しめるのではと思いました。ただサポートは必要なので、安心できるメンバーとともにです。

 障害があると行ける場所が限られ、楽しみの幅が広げにくいことがあります。また値段がかからない方法が選べず、金銭面がネックになることもあります。でもやってみたいという思いと、支えてくれるメンバーがいれば、できることも増えていきます。障害のある人の楽しみもどんどん増えることを願います。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。