30代後半の沖縄県民の死亡率が全国で最も高いことをご存知でしょうか。働き盛りのアラフォーで亡くなる人がひそかに増えており、健康長寿の島が過去の幻想となりつつあります。人とのつながりや食文化がたたえられ、2000年代には世界から注目されるほど長寿だった島で、今一体何が起きているのでしょうか。
沖縄県では、健康診断で異常が指摘される人の割合は12年連続全国ワーストで、高血圧症や糖尿病、脂質異常症、アルコール性肝硬変などの生活習慣を背景とした病気を患う人が非常に多いことがわかっています。
入院が必要となるような重症の病気を患う人の割合も全国平均より高い一方で、通院者率(病院に通院している人の割合)は全国ワーストです。つまり、沖縄県民は持病があるにもかかわらず定期的に病院に通院しておらず、病気が進行して初めて病院を受診し、入院が必要になるケースが多くなっていると考えられます。これは医療現場で働く医師の感覚としても正しいように思います。
「生来健康で病気もしたことがない」と思われた人でも、実際はこれまで健診を受けておらず、知らないうちに病気が進行してしまっていた人が多くいます。
また健診で異常を指摘されていても、仕事で日中に受診することが難しい人や、経済的理由から通院できない人もいます。夜間に空いているクリニックが少ないことや、「かかりつけ医」を持つという文化がまだ浸透していないことも原因の一つかもしれません。
沖縄では欧米の食文化の流入や車社会など、昔と比べるとあらゆる生活環境が変化してしまっており、今の30代と80代では同じ沖縄でも住んできた世界が全く異なります。時代は移り変わるものですが、元気で長生きのおじいとおばあがいてこそ、沖縄は今後も活気にあふれる魅力的な島になると思います。
沖縄の健康問題の解決には、医療の整備だけではなく、さまざまな分野との連携が必要不可欠です。また一人一人がどのような人生を歩みたいかを考え、自分で健康を管理する力を身につけることが必要です。
(松本一希、県立八重山病院 総合診療科)