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「本土に持って行くしかない」 米軍廃棄物、全国で巡回展示 北部で回収ツアーなども


「本土に持って行くしかない」 米軍廃棄物、全国で巡回展示 北部で回収ツアーなども 「基地引き取り党」共同代表の中村之菊さん=12日、浦添市城間
この記事を書いた人 Avatar photo 慶田城 七瀬

 米軍廃棄物の問題を県外の人に知ってもらおうと、「基地引き取り党」共同代表の中村之菊(みどり)さんが巡回パネル展を全国各地で開催している。世界自然遺産に登録された本島北部やんばるの米軍北部訓練場返還跡地で見つかった、米軍廃棄物の現物や写真の展示企画は「沖縄に来られないなら本土に持って行くしかない」と始まった。

 パネル展は東京や大阪などで始まり、今後は山形や新潟、北海道や鳥取など来年2月まで各地で開催する。8日からは浦添市城間の「平敷兼七ギャラリー」で県内で初めて開催されている。運営費用は入場料やカンパでまかなっている。

 浦添のギャラリーには、使用済みの照明弾や空包、空き瓶や土のう袋、野営で使われたとみられるレーション(食糧配給品)や食器類など、泥土にまみれた実物が十数点並ぶ。チョウ類研究者で東村在住の宮城秋乃さんが回収したものだ。

 中村さんは宮城さんと何度も現場を訪れ、写真も撮影した。

 割れた瓶に絡まる木の根の様子や、無数の空包がまるで「森に生えた銃弾」。米軍が訓練場として使用した後に放置され「長年そのままそこにあることが衝撃だった」と振り返る。

 一方、やんばるの小さな生き物の写真もある。森でリュウキュウアサギマダラやクロイワトカゲモドキなど希少種にも出合った。「森に廃棄物が残り続けている。これで世界自然遺産と言っていいのか」と疑問を投げかけた。

 沖縄防衛局のまとめでは、16年の返還以降も空包5万発が見つかり、処理費用は7億円を超えた。「米軍のやりたい放題になっている。本土の人に見て知ってもらって日本側に米側に言うべきことをちゃんと言ってもらう。そういう姿勢をつくっていきたい」

 (慶田城七瀬)


 浦添市の「平敷兼七ギャラリー」での開催は20日まで、午前10時から午後6時。入場料が500円。19日午後5時からは中村さんのトークもある。トークは千円。

北部で回収ツアー実施 廃棄物調査の情報開示請求も

 中村之菊さんはパネル展のほかにも、本土から有志を募って返還地での廃棄物回収ツアーを実施したほか、これまで国の廃棄物調査業務報告書の情報開示請求などで、広く実態を伝えようと取り組んでいる。

 最近国から開示された報告書には、2022年8月から23年3月末までに処理事業で廃プラスチック類や金属くず、ガラスくずなど計約2500キロ、空包約1万4000個など国により回収された。調査地点のヘリパッド跡地周辺では大量の照明弾や実弾も見つかっている。民間調査会社への業務委託料は約9500万円。

 中村さんは「(回収物が)たくさん出てきているということは、『支障除去』(汚染物質の撤去など)と言いながら手を付けていないことが想定できる」と分析した。

 (慶田城七瀬)