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セクハラ疑惑「提訴なら暴露」南城市長発言はなぜ問題か 矢野・琉大教授に聞く


セクハラ疑惑「提訴なら暴露」南城市長発言はなぜ問題か 矢野・琉大教授に聞く 矢野恵美・琉大法科大学院教授
この記事を書いた人 Avatar photo 岩崎 みどり

 南城市で古謝景春市長(68)の運転手をしていた女性が「市長からセクハラを受けた」と市に申告していた問題で、市長の「裁判になれば全部暴露する」と提訴を準備する女性を脅すような発言があった。琉球大学法科大学院の矢野恵美教授(ハラスメント相談支援センター長)は「訴訟は女性の権利だ。女性やその家族の名誉などに害を加えるようなことを言い、権利の行使を妨害するのは強要罪だ」と指摘する。女性が求めた第三者による調査を、市は女性が業務委託であることを理由に拒否した。この点についても矢野氏は問題点を挙げている。(岩崎みどり)


 今回のケースでは被害を訴えている女性が業務委託を受けており、市とは雇用関係にない。つまり「職員」には当たらないので、市の中で調査委員会を立ち上げるなどの措置ができなかったのだという。

 しかし、ハラスメントは立場の優位性が背景にあり、市長が運転手の女性に対して立場の優位性がなかったとは言えないだろう。裁判例でも2021年4月にはパワハラについて、22年5月にはセクハラについて、立場の優位性を認め、業務委託の個人事業主について、事業主に損害賠償義務があると認定したものがある。

 今年5月に成立した「フリーランス新法」にも、業務委託へのハラスメント行為に関する相談対応を義務化しているのも同様の背景からだ。今回のケースではハラスメントの基本である立場の優位性を理由に市で扱うことも考慮できたのではないか。

 また、市長は特別職ではあるが、一般職同様に公務員でもある。しかも市の公務中に行ったとされる事案である。そもそもハラスメントは事業所外であっても、例えば事業所の飲み会の場などは規定の対象内である。被害を訴えた女性が外部の人間であったとしても、市長が公務の中で行ったハラスメントとされる行為については、市で扱うことは十分にできたのではないだろうか。

(刑事法、ジェンダー法)