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キューバに渡った山入端萬栄さんの納骨場所が判明 上野英信作「眉屋私記」の中心人物


キューバに渡った山入端萬栄さんの納骨場所が判明 上野英信作「眉屋私記」の中心人物 「眉屋私記」の題材となった山入端萬栄さんが納骨されているキューバ日系人慰霊堂(比嘉久さん提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 池田 哲平

 【名護】記録作家・上野英信の代表作「眉屋私記(まゆやしき)」(1984年出版)で描かれた山入端萬栄さんの遺骨が、キューバの首都ハバナのコロン墓地内にある「キューバ日系人慰霊堂」の中に納骨されていることが明らかとなった。山入端さんの親族で、名護博物館特任館長の比嘉久さん(63)らによる現地調査で確認された。山入端さんは1959年に亡くなり、墓地に葬られた写真などが残っていたが、近年は墓の状況などが分からなくなっていた。


 眉屋私記は沖縄県名護市屋部の「山入端一族(屋号・眉屋)」をモデルに、海外移民の歴史を描いた作品。中心に描かれた萬栄さんは1908年に炭坑移民でメキシコに渡り、その後はキューバに移って家庭を築いた。沖縄の親族に届いた手紙によると、萬栄さんは1959年に亡くなり、コロン墓地に埋葬したと記され、墓の写真も同封されていた。だが、その後は墓の状態が不明だったという。


 比嘉さんは今年11月上旬、家族や名桜大の上原なつき准教授らとハバナを訪ねた。キューバ日系人慰霊堂の中で「COLECTIVO(スペイン語で集合・集団の意味)」と書かれた場所に他の遺骨とともに納められたことが、日系人への聞き取りで明らかとなった。慰霊堂は萬栄さんが亡くなってから5年後に建てられており、その前に埋葬された萬栄さんらの遺骨は一緒に集められて埋葬されたとみられる。

家族と写真に映る山入端萬栄さん(右上、比嘉久さん提供)


 慰霊堂の中には、「UCHIMA」や「TAMASHIRO」「UEMA」など沖縄県系人のものとみられる納骨場所も確認された。ハバナでは、萬栄さんが娘マリアさんらと生活した家が現存していることも明らかとなった。比嘉さんは「キューバへの移民の歴史は明らかになっていないことも多い。萬栄さんの足跡が残り、毎年日系人の手で拝まれていることが分かって本当に良かった」と話した。


 比嘉さんは、調査結果を今月2日に福岡県直方市で開かれた「シンポジウム・筑豊と沖縄―上野英信生誕100年に考える―」(筑豊女学園大学社会連携センター主催)で発表した。シンポでは上野さんと親交のあった牧師の犬養光博さんが基調講演したほか、元山梨学院大教授の我部政男さんが沖縄の移民の歴史、元琉球大教授の仲程昌徳さんが眉屋私記に出てくる食べものから、当時の世相などについて話した。
(池田哲平)