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辺野古の寒空に続く工事、晴れぬ心 代執行訴訟 県敗訴に住民は複雑 沖縄


辺野古の寒空に続く工事、晴れぬ心 代執行訴訟 県敗訴に住民は複雑 沖縄 埋め立てが続く名護市辺野古の新基地建設現場(辺野古側)=21日、名護市辺野古
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊


【名護】米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、県に設計変更の承認を命じた判決から一夜明けた21日。辺野古の住宅街は分厚い雲に覆われ、冷たい風が時折吹いていた。

 人通りも少なく、普段と変わらない静けさ。埋め立て現場ではダンプや重機が作業を続けていた。かつて基地に隣接する歓楽街として発展したが、現在は古い看板などに面影が残るだけだ。

 自宅の玄関で作業中の女性(71)は、若い世代の流出で地域が高齢化していることや新基地建設の賛否で区が二分されている現状を嘆く。辺野古で生まれ、辺野古で育った。新基地建設に賛成でも反対でもないが、判決に対して「やっぱり政府には逆らえないのかね」と声を落とす。

 米軍キャンプ・シュワブから重機の作業音が響く中、人影がまばらな午前10時頃の辺野古漁港では漁師の男性が車に乗り込もうとしていた。新基地建設に対し「本当は反対だが生活もある。県は何度も裁判に負けているし国の考えもある」と複雑な思いが漏れる。

 正午前、シュワブゲート前で基地建設に反対する約50人の市民らが、普段と変わらず座り込みを始めた。2014年から抗議活動に参加している橋本武志さん(72)=宜野座村=は「国が淡々と工事を進めるならば淡々と抗議するだけだ」と話し、判決に左右されず抗議活動を続ける決意を語る。

 辺野古区に隣接する名護市豊原区では午後2時過ぎ、学生数人がバスケットボールを楽しむ中、「ドン、ドン」とごう音が響いた。学生らによると、ごう音は米軍の砲弾訓練だ。月1回程度あるという。「初めて聞いた時は驚いたが、今は何も思わない」と淡々と話し、バスケットボールを続けた。

 約30年前から区で暮らす男性(83)は新基地に反対の立場。「莫大(ばくだい)な税金を投入して腹が立つ。辺野古の基地は(軟弱地盤があるので)絶対に完成しない。造れるものなら造ればいい」と語気を強めた。

 賛成、反対の2色ではない辺野古の住民。代執行の結果を受けても心のもやもやが晴れない中、目の前で工事が淡々と進んでいた。 (武井悠、渡真利優人)