名護市辺野古の新基地建設を巡る防衛省の設計変更申請を28日、国土交通相が県に代わり承認した。地方自治法に基づく史上初の代執行に対し、玉城デニー知事は「地方自治の本旨をないがしろにするもの」と批判。代執行訴訟で最高裁に上告した。琉球大学名誉教授の比屋根照夫さん(政治思想史)に見解を聞いた。
国は28日、全国自治体史上初の代執行を行った。この結果、地方自治法に基づく沖縄の自主・自立的な発展は閉ざされる危機に直面している。同時に沖縄の未来選択の可能性も危機にひんしている。
沖縄を巡る閉塞(へいそく)状況で上告を決意した知事の決断は大きな波紋を呼ぶであろう。しかも立法・司法・行政の三権がことごとく国益・公益の優先を掲げる状況の中でである。沖縄の民意は顧みられず、この状況は民意と国益の対決であり、地方自治の理念として掲げられる国と司法の平等性はこうして失われた。
倫理的・道義的な立県構想の理想を掲げて、県政の王道を模索する沖縄の闘いはきっと国民的な共感・共鳴を呼ぶものとなろう。
顧みれば戦後沖縄の自治権は米軍統治下の闘争で獲得された。1950年代の島ぐるみ闘争、那覇市政に対する米軍の自治権剝奪が今まさにわれわれが直面している現実と重なり合う。
沖縄の自治権は米軍から与えられたものではなく、米軍にあらがう民衆の闘争によって獲得されたものだ。この自治権獲得闘争は現代の法廷闘争に継承されているに違いない。主席公選運動、教公二法闘争、これらの事例がまさに民衆の、下からの自治権獲得運動の事例であり、県民の自治権確立への決意は固い。
代執行は強行されても沖縄の民意は決して消滅しない。
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