閉館した首里劇場に「奇跡的」に残った手書き看板 老舗蔵元「瑞泉」に戻る 戦後の復興を伝える


閉館した首里劇場に「奇跡的」に残った手書き看板 老舗蔵元「瑞泉」に戻る 戦後の復興を伝える 首里劇場にあった瑞泉酒造の看板を手にする金城裕太さん(右)と佐久本学・瑞泉酒造社長=17日、那覇市首里の瑞泉酒造
この記事を書いた人 Avatar photo 岩崎 みどり

 那覇市首里にあった首里劇場(1950~2022年)に長年掛けられていた瑞泉酒造の看板が17日、同酒造に戻った。当時の社名「佐久本政敦酒造場」や「首里市」などと書かれた看板に、佐久本学社長は「歴史を伝える貴重な物でありがたい」と喜んだ。譲渡したのは、劇場館長で22年に亡くなった金城政則さんのおい・金城裕太さん(48)。裕太さんは「劇場はシロアリ被害がひどかったが、看板は奇跡的に残っていた。あるべき所に戻せてほっとしている。首里劇場があった証しにもなる」と話した。

 1887年に首里で創業した瑞泉酒造は沖縄戦により休業、1951年に「佐久本―」として再開した。佐久本社長は「戦後、首里を盛り上げようという思いで看板を贈ったのではないか」と看板設置の経緯を推測した。「首里城の再建、コロナ明けの今、地域貢献を大切にした先代の思いを大切にしたい」と看板に目をやった。

 首里劇場は、館長の政則さんが他界したことで2022年6月に閉館した。裕太さんによると看板は舞台横の壁に舞台裏向けに掛けられていた。裏面は別会社「伊藤時計店」の看板になっている。瑞泉酒造は、同社2階の展示場に看板を設置する予定だ。

 (岩崎みどり)