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あき社長の言葉を胸に「ランウエイ」に挑む 高橋さん、周囲の支えで意識に変化「自分大切に」<雨のち晴れ>第2部「かさ屋」の下で(6)


あき社長の言葉を胸に「ランウエイ」に挑む 高橋さん、周囲の支えで意識に変化「自分大切に」<雨のち晴れ>第2部「かさ屋」の下で(6) 「ザ・ウォークジャパン2024」沖縄大会に出場した高橋亜衣さん。心の支えとなったロックをイメージした衣装で自分らしさを表現した=2023年12月(本人提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 吉田 早希

 昨年12月下旬、那覇市松山の飲食店「琉球かさ屋」で働く高橋亜衣さん(32)=沖縄市=の姿はランウェイの上にあった。「人生は持久戦で、一番大事なのは続けること」。店代表の玉城あきさん(39)=宜野湾市=の言葉を胸に、年齢やジェンダーにとらわれず歩き方の美しさを競う「ザ・ウォークジャパン2024」沖縄大会に挑み、準優勝した。昔からロックなどの音楽が好きで、自宅に引きこもっていた時からの心の支えだった。本番はレザーや黒色の衣装で、自分らしさを表現した。

 玉城さんの誘いで昨年6月から琉球かさ屋で働き始めた。繰り返し伝えられたのは、収入に合わせて生活をやりくりする大切さ。「私は夜の仕事が長く、一般企業に勤めた経験はない。あき社長は、県内では手取り15万円もらえれば良い方で、みんなその中で生活をやりくりしていると教えてくれた」

 生活を振り返ってみた。買い物をする時は特段値段を気にせず、他の交通手段があっても距離に関係なくタクシーに乗るのが当たり前だった。一方で今の給料はキャバクラにいた頃の半分。高橋さんは「当時の金銭感覚から抜けきれない部分もあって、収入に見合った生活に変えていくのは正直しんどい」と打ち明ける。それでも「やりくりの方法をしっかり学んで、生活環境を整えたい」との固い決意を原動力にする。買い物や移動時も少しずつだが確実に、意識は変化してきた。

 今は自傷行為やオーバードーズ(薬の過剰摂取)に走りたいとは思わない。困った時には孤立せず、手を差し伸べてくれる友人ができるなど、人にも恵まれた。「あき社長をはじめ、私のことを大事に思ってくれる人と出会えたおかげで、私も自分を大切にしようと考えるようになった」。琉球かさ屋では月に一度、昼間に学習会を開き、有資格者のサポートを受けながら簿記の知識などを学んでいる。高橋さんも参加者の一人で、資格取得につなげたい考えだ。

 不登校や引きこもり、最近は外部の刺激や周りの人の感情を敏感に受け取る気質を持つHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)が話題になるなど、生きづらさを抱える人は多い。「生活を整える最中でまだ大きな目標はないけど、同じ境遇の人たちに『引きこもりだった私でも生きていける』と伝えられるようになりたい」。あき社長との二人三脚は続く。

 (吉田早希)