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【記者解説】実質審理を狙う住民訴訟 辺野古の住民らが国提訴 新基地建設問題 沖縄


【記者解説】実質審理を狙う住民訴訟 辺野古の住民らが国提訴 新基地建設問題 沖縄 新たな訴訟を提起するため那覇地裁へ向かう名護市辺野古周辺の住民ら=22日午後1時7分、那覇市樋川
この記事を書いた人 Avatar photo 金良 孝矢

 辺野古新基地建設で地元住民らによる新たな訴訟提起は、公有水面埋立法の要件充足性について、裁判所が中身に踏み込んで審理するよう求める大きな狙いがある。裁判所は辺野古を巡る各訴訟で実体審理を避け、国に有利な判断を示すなどしてきたが、住民らは訴訟を通して基地建設を止める突破口としたい考えだ。

 県と国の訴訟では、裁判所が中身に入らず県の訴えを退けるなどし、県にとっての地方自治や民主主義が否定されてきた。住民らの訴訟でも、訴訟を起こすために必要な「原告適格」が大きなハードルとなっている。2019年に提起された住民による別の訴訟では、一部の原告適格が認められ一時は実体審理に入るなど期待感もあった。しかし裁判官が交代し、22年の判決は一転して原告適格が認められず訴えが却下された。

 国の元職員で行政事件訴訟法改正に携わった政策研究大学院大学の福井秀夫教授は、住民らに原告適格があるのは自然ととらえる。基地ができることによる権利侵害から事業の違法性が問えるとし、「住民訴訟は非常に筋のいい裁判」と評する。

 裁判所は入り口論に終始せず、埋め立ての可否に正面から向かい合う姿勢が求められる。
 (金良孝矢)