「もうここも『世界一危険な保育園』として、ギネスに申請でもしようか」。米軍普天間飛行場にオスプレイが配備された2012年10月1日、宜野湾市内の保育園で園児らとオスプレイを見上げた棚原郷園長はつぶやいた。県内で反発が高まる中、日米両政府が配備を強行したことを皮肉ったつもりだった。あれから11年余。オスプレイは鹿児島県・屋久島沖で国内初の死亡事故を発生させた。「皮肉は現実のものになった」と危機感を募らせる。
米海兵隊は小規模部隊を島々に分散展開し、攻撃拠点を確保する「遠方前線基地作戦(EABO)」を進めている。沖縄国際大学の野添文彬准教授は「滑走路が整備されていない離島などでも展開されることが予想される」と指摘する。ヘリコプターのように限られた場所でも運用できる上、航続距離が長く、速く飛行できるオスプレイを米国は重要視しているという。
米軍普天間飛行場のMV22の離着陸回数は12年の配備から19年まで2千回台だった。米国のオスプレイ重視を示すかのように、20年には4240回に急増した。21、22年の両年は回数を落としたものの3千回を超える。配備前から危険性を指摘されてきた機体の運用は激化している。
普天間飛行場のMV22オスプレイは14日、屋久島沖での墜落原因について具体的な説明がなく地元が納得しないまま飛行を再開した。同じ日、東京では「国防のため」と林芳正官房長官が述べた。県民の反発をおしきった強行は、12年の配備時と重なる。
飛行が再開した14日、オスプレイの鈍く重い音が宜野湾市内に響いた。それでも子どもたちの笑い声も聞こえてきた。市真志喜にある森川保育園で子どもたちが遊ぶ姿に目を細めていた棚原園長は「安全な空を確保してほしい」と、オスプレイのプロペラ音を聞いてつぶやいた。
(名嘉一心)