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<記者コラム>多様な正しさ 名嘉一心(中部報道グループ)


<記者コラム>多様な正しさ 名嘉一心(中部報道グループ)
この記事を書いた人 Avatar photo 名嘉 一心

 あなたは街頭で署名を求められたらどうするだろうか。求めてきた人はあなたの署名を基に、何かしらの要請、抗議など訴えたいことがあるのだろう。では一体、「なぜ」「誰に」と考える。その後は内容や理由を聞いて納得すれば署名に至る。多くの人が一度くらいは経験することだ。

 中城モールの隅にある「リトル・マーメイド」というカフェで人を探していた。「初めまして」と言葉を交わし、取材が始まった。30分が経過したところで、お礼を述べて席を立とうと椅子を後ろに下げようとすると「あと5分。いいですか」と引き留められた。

 障がいが理由で修学旅行への参加を拒否された子どものために「署名を求められた」と思い出を語るように話し始めた。私は署名をした上で、学校の怠慢な態度に批判でもするのだろうと思ったが違った。

 彼は署名という形では協力できなかったという。活動には賛同できたし、署名を求めてきた人のことも嫌いではなかったそうだ。ただ学校に正しさだけをぶつけても現状は変わらないと感じたがための拒否だった。彼は自分なりに考え、似た境遇の子が旅行に参加した事例を新聞社に紹介し取り上げてもらったという。

 話を終え外に出た。「彼は記者に『正しさの伝え方は多様である』と伝えたかったのだろうか」と、中城モール裏のビーチにたたずむマーメイド像を見ながら私は考えた。一人一人の気持ちをできるだけくんだ言葉で記事を書きたいと思った。