2021年1月にコザ高校2年(当時)の空手部男子生徒が自ら命を絶った問題で、県による第三者再調査委員会の再調査結果の概要版が22日、報道陣に公表された。同日夕、再調査委は県庁で会見を開き、2年3カ月にわたる調査結果を示した。「二度と第三者委が置かれることがないよう」にと、「生徒の人権尊重が最優先される」学校体制の確立を求めつつ、男子生徒を知る部員や同級生に対しては、寄り添うメッセージが込められていた。
男子生徒は顧問から否定的なメッセージを受け続け、頑張っても認めてもらえないだけでなく、一方的に他の部員の責任を問われたり、成績をからかうLINE(ライン)のやりとりも見られたという。
男子生徒は大学進学で空手を特技としてアピールすることを考えていたとみられることから、顧問の理不尽で執拗(しつよう)な叱責(しっせき)に反論できず、強い無力感を抱きながら「支配的主従関係」が形成されていたと考察した。そのような状況下で自死前日に他の部員らが「(顧問の)あれほど怒っている様子は見たことがない」と話すほど「強烈な叱責」を受けたことが「自死に至らしめた直接のきっかけとなった大きな要因」と結論づけた。
顧問による女子部員への不適切な言動があったことも判明した。しかし管理職は女子部員に聞き取りをせず、口頭注意だけにとどめていた。
一方で顧問は部員からは「理不尽に怒る」「怒るのは日常茶飯事」などと受け止められていたが、教職員からは高い評価を受けており、管理職は「非常にバランスがよく学習面、進路面の子どもたちのサポートも大変よくしてくれていた」などとし、生徒の評価と乖離(かいり)していた。また学校では、校則違反で指導された場合に発行され、発行数によって罰則が重くなる「イエローカード制」という指導が行われていたことを問題視した。同制度は県内複数校で実施されていて、教師側には抑止力となるが生徒にとっては累積される指導がプレッシャーとなることが危惧されている。
調査では個別の事情を考慮せず罰する「不寛容な生徒指導(ゼロ・トレランス的指導方法)」で、生徒たちが異議を申し立てしづらい背景があったことも指摘した。
調査書概要版の後半ではコザ高や県教委、県への提言を記し、不適切な指導の背景には「子どもの権利条約」の理念の理解があまりにも不十分であったこと、それを踏まえて認識を改めた校則や研修の見直しを求めた。 また教職員の懲戒制度についても言及し、児童生徒へのパワーハラスメントなども戒告程度にとどまらない、懲戒処分基準の見直しも求めた。
(嘉数陽)