![](https://ryukyushimpo.jp/tachyon/2024/03/%E8%A8%98%E8%80%85%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8C.png)
記者となって約1年、入社2カ月目の出来事が今でも心に残り続けている。
入社して初めての配属は経済班の農林水産担当記者だった。先輩からの引き継ぎ書の懸案事項にあった、子牛の競り価格について調べると、5月の子牛価格が大幅に下落していることが分かった。急いで繁殖農家や競り市場に取材し、記事は1面に掲載され、自分で取材したことが大きく掲載されたことに達成感を感じていた。
それから数週間たったころ、取材を受けてくれた繁殖農家の方から電話があった。「子牛の件、まだ調べてくれていますか」。その声色は、農場で取材した際に生活の苦しさを語っていた時のままだった。
その電話を受けた時、焦り、しっかり応答できたか分からない。「子牛の件は記事にし終えた」と思っていたことは大きな間違いだと気づいた。
新入社員として入社した時、「新聞社の目的は県民の生活をより良くするためだ」と言われてきた。自分もそのために入社したつもりだったが、早くも初心を忘れ、記事を出すこと自体が目的になっていた。
この1年間を振り返っても、日々の仕事の忙しさなどで、何のために記事を書いているのか意識できていなかったこともある。だが、記事の背景には県民の生活があるということを心にとどめ、本当の意味で達成感のある仕事を目指したい。