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「ひなん場所は…」日本語聞き取れず混乱 「外国人も災害弱者」<検証 津波避難>2


「ひなん場所は…」日本語聞き取れず混乱 「外国人も災害弱者」<検証 津波避難>2 津波警報を受け、パレットくもじに避難する市民ら。日本人に混じってさまざまな国籍の外国人が避難する姿もみられた=3日10時すぎ、那覇市久茂地
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「津波のひなん場所は若狭公民館で良いですか? 新しい学生からたくさん連絡来てます」。3日午前9時53分、那覇市の若狭公民館の宮城潤館長のスマホに、あるネパール人からメッセージが入った。送ったのはネパール献血者協会のサハ・ラフル・クマル代表。ラフルさんの下には、沖縄に来たばかりの在留外国人からの助けを求める相談が数多く寄せられていた。

 市内でも外国人が多い若狭地域。宮城館長によると、在留外国人は防災に関する情報の周知不足もあり、防災行政無線で避難を呼びかけても行き届かないなどの課題があったという。宮城さんは災害発生時に必要な「自助力」を高めるための「つながりづくりが大事だ」と語る。

 りゅうぎん総合研究所の推計では、2023年10月末時点の県内在留外国人の総数は2万4386人。人口比にして約1・6%が外国人だ。

 那覇市防災危機管理課によると、これまでの防災訓練で外国人から防災行政無線の人工的な音声や難しい日本語が聞き取れないとの意見があったという。そのため、防災行政無線では、平易な表現でゆっくり呼びかけ続けたという。

 実際、外国人は行政が発信する情報を理解できたのだろうか。津波警報が出た翌日の4日、琉球新報が在留外国人を取材したところ、「避難指示が日本語だけで理解しにくかった」「津波がどこから、いつくるのか全く分からず混乱した」などの声が多く上がった。

 コミュニティー放送局「FM那覇」の奈良蓮社長は、行政の情報発信の仕方に課題を感じた。警報時、同社がある沖映通りには多くの外国人が日本語発信の避難指示をきちんと把握できずにいたという。そのため、FM那覇では急きょ、英語や中国語、韓国語などで避難を呼びかけた。

 奈良さんは「防災には多言語での情報発信が不可欠だ」と指摘する。さらに、きめ細かな情報伝達手段として、災害時に地域に即した情報を提供する「自動起動ラジオ」の導入を提言する。「外国人も高齢者らと同じ災害弱者であり、配慮が必要だ」と語った。

 言語研究家のクロス・ロペス・ルベンさん(30)は多言語に加え「優しい日本語」での情報発信の重要性を説く。ルベンさんは警報時、那覇市の松尾公園に避難した。ネパールやベトナム、中国、ギリシャなど外国人旅行客らも多くいて、ルベンさんは事情をつかめない外国人に地震の詳細を伝えた。ルベンさんは「英語が通じない外国人も多い。英語を万能と思わないほうがいい」と語った。

 (吉田健一、嘉陽拓也)