県環境科学センター総合研究所の小澤宏之所長や龍谷大学先端理工学部の丸山敦教授らの研究チームは5日、2019年以降に地域絶滅した可能性が高いとされていた琉球列島のジュゴンについて生息していることを突き止めたとする論文を発表した。DNA分析や目撃情報などをまとめ、同日付で国際オンライン専門誌「Scientific Reports」に掲載された。研究者は、今後も継続した調査や餌場となる海草藻場の保全が必要との認識を示した。
国や県の絶滅危惧種に指定されているジュゴンは八重山地域から沖縄本島周辺までの広い範囲に生息した記録があるが、明治時代以降に乱獲で減少したとされる。個体数が少なく、19年に今帰仁村で死んだ個体が見つかった後は、地域絶滅した可能性が高いとする論文が発表されていた。
今回の論文は、10年以降に得られた目撃情報や食(は)み跡の分布情報を整理したほか、本島北部の名護市久志と宮古・伊良部島で採取されたふんからDNAが検出されたことなどをまとめ、生息域は本島周辺海域や宮古、八重山諸島など広範囲の可能性が高いとした。
これまでの目撃情報では母子と思われる個体の遊泳も確認されており、現在もジュゴンが繁殖していると推察している。また、ジュゴンは移動能力が高いことから、フィリピンに生息するジュゴンが琉球列島に移動する可能性についても目撃情報などから考察した。
調査を総括した小澤所長は「DNAの分析で、より正確な情報が得られるようになった。今後もジュゴンの分布について研究を進め、餌場となる海草藻場の保全対策に取り組んでいく必要がある」と話した。
沖縄のジュゴンをめぐっては、名護市辺野古の新基地建設で環境対策を助言する防衛省の有識者会議の一部の委員が英科学誌に「19年に絶滅した」との論文を投稿した後に修正された。また有識者会議は辺野古周辺海域で個体が長期間確認されていないとして調査の縮小を助言していた。
(慶田城七瀬)