有料

「2・28事件」の被害申請を却下 台湾行政院 沖縄遺族ら「良心に問いかけたい」  


「2・28事件」の被害申請を却下 台湾行政院 沖縄遺族ら「良心に問いかけたい」   記者会見する遺族の當間ちえみさん(中央)と代理人の青山惠昭さん(左)、又吉盛清さん(右)=8日、県庁記者クラブ
この記事を書いた人 Avatar photo 中村 万里子

 台湾の国民党政権が多くの住民を殺害した1947年の「2・28事件」で、与那国島出身の仲嵩實さん=当時(29)=と石底加禰(かね)さん=同(39)=が犠牲になったとして遺族らが被害認定を求めている件で、台湾行政院は3月6日、遺族らの上訴を退けた。

 遺族の當間ちえみさん(67)が4月8日、県庁で記者会見を開き明らかにした。決定から2カ月以内に台北高等行政法院(裁判所)に行政訴訟を提起できるとされているが、対応を決めていないという。

 遺族らは2016年に初めて申請した。17年に財団法人「二二八事件記念基金会」は、仲嵩さんの死亡届でマラリアが死因とされていることなどを理由に申請を却下した。遺族らは基金会の上部組織の行政院に上訴したが却下された。

 遺族らは、19年に見つかった、仲嵩さんを船主として雇っていた台湾人・鐘志寛(しょうしかん)さんの証文を新たな証拠として提出。証文には、仲嵩さんが中国軍兵士に銃殺されたと記されており、認定につながるか注目されていた。今回、行政院は「新たな証拠は当初の決定を変更するのに十分ではない」とした。

 當間さんは「証文を書いた人について調べてほしいと何度言っても調べてくれなかった。あの時代に死因をマラリアと書かなければならなかった状況を分かってほしい」と悔しさをにじませた。代理人の青山惠昭さん(80)は「真実を徹底的に調べずに判断した不当な回答だ。証文に書かれた内容はありもしないことなのか、台湾の良識と良心に問いかけたい」と訴えた。沖縄大客員教授の又吉盛清さん(82)は、アジアにおける平和と人権の問題として知事からも働きかけてほしいとの考えを示した。 

(中村万里子)