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米軍関係者との交際トラブル、「婚姻前」は基地の支援対象外 北谷女性殺害事件から5年 沖縄


米軍関係者との交際トラブル、「婚姻前」は基地の支援対象外 北谷女性殺害事件から5年 沖縄 基地で掲揚されている日米の国旗
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

【中部】北谷町で発生した米兵による女性殺害事件から13日で5年がたった。県は事件をきっかけに県民と米軍関係者の家庭問題や交際トラブルの支援協力体制を県と米軍間に確立しようと、2020年度から「国際家庭相談ネットワーク構築事業」を実施。県と在沖米軍それぞれの幹部らが意見交換する連絡会議を定期開催するも、当初議論にあった書面合意による協力体制は構築できていない。

 特に米軍関係者と交際段階の女性の場合は、基地内の支援機関の支援対象外で、日本の支援機関にもつながりにくい。

 同事件で殺害された女性は米軍憲兵隊や県警に交際を巡る米兵とのトラブルを相談していたが、米兵の男=犯行後に自死=の凶行は防げなかった。

 県は当初、基地内の支援機関とのネットワーク構築を目指した。しかし、言語や法制度、人事異動による担当者の交代などがあり、連携は進まなかった。そこで22年度からは、これまで蓄積した基地内の相談支援機関の情報を報告書にまとめた。4月中に発行し、県内相談支援機関や市町村に初めて配布する。

 報告書では基地内のDVや児童虐待などに対応する「ファミリーアドボカシープログラム」(FAP)や性暴力発生時の被害者支援を行う「性暴力予防プログラム」(SAPR)、リーガルオフィス(法務部)などの情報を紹介する。

 ただ、これらの支援機関は基本的に米軍関係者と結婚して日米地位協定該当者にならないと支援が受けられない。婚姻前の交際トラブルにも対応するため、県と基地内の支援機関の連携深化が本来は必要となる。

 県担当者は「連絡会議を開催できるようになったが、今すぐ劇的に状況が改善できるわけでもない。まずは日米の法制度の違いや基地内支援機関の情報を市町村などに共有して、困っている人の相談先の選択肢を広げたい」と話した。

 同事業ではこのほか、子の認知や離婚、養育費のトラブルの相談窓口「国際家事福祉相談所」を北谷町役場に開所している。21年1月から24年3月までに計182人から延べ653件の相談を受けた。 

(梅田正覚)