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琉球王国時代の印章・家譜を寄贈 士族子孫・上原さん 宮崎で戦禍逃れ 那覇市歴史博物館 一対確認は初 沖縄


琉球王国時代の印章・家譜を寄贈 士族子孫・上原さん 宮崎で戦禍逃れ 那覇市歴史博物館 一対確認は初 沖縄 琉球王国時代の印章2つと(左)、印章の入れ物とみられるもの=28日、那覇市久茂地の那覇市歴史博物館
この記事を書いた人 Avatar photo 中村 優希

琉球王朝の士族の子孫で、宮崎県都城市在住の上原久知(ひさとも)さん(67)らが28日、那覇市久茂地の那覇市歴史博物館を訪ね、琉球王国時代の19世紀ごろに士族が使っていた印章と、その印章が押された家譜仕次(しつぎ)などを寄贈した。同博物館によると、琉球王国時代の印章と、照合できる文書が一対となって出てきたのは初めてという。

寄贈された琉球王国時代の家譜(左)と家譜仕次=28日、那覇市久茂地の那覇市歴史博物館

印章は、琉球王府に提出する正式文書などに使われていた。王国時代の印章は現物がほとんど残っておらず、研究が進んでいない分野という。家譜仕次は、家譜への加筆をする際に、加筆内容などを王府に提出するためにまとめた文書。

これらの他にも、家譜や印章の入れ物、太平洋戦争中とみられる写真など数百点を寄贈した。同博物館が寄贈資料の分析を進める。

上原さんの先祖は、現在の那覇市小禄や宇栄原地域を領地としていた士族。寄贈された資料には、王府が領地を与える際に発行した文書もあり、宛名に「蔡(さい)承詔(しょうしょう)」と唐名が記されている。

琉球王国時代の資料は沖縄戦で焼失したものも多いが、上原さんの父・知新(ちしん)さんらは戦前、資料を持って沖縄から宮崎県に家族で移り住んだため、戦禍を免れた。

琉球王国時代の歴史資料を寄贈した上原久知さん=28日、那覇市久茂地の那覇市歴史博物館

同博物館の伊集守道主任学芸員は「琉球王国時代の資料がこれだけまとまってあるのは珍しい。沖縄に資料が少ない中で、里帰りしてくれるのは琉球の歴史を知る上でもありがたい。多くの人に見てほしい」と話した。

上原さんは「内容が分かってほっとしている。自宅に置いているよりも、展示することで皆さんで価値を共有してもらいたい」と話した。

同博物館では、今回寄贈された資料の一部を、5月3日から1カ月間ほど展示する予定。

(中村優希)

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