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「戦場化の前夜」と危機感 石原昌家さん講演 沖縄戦の記憶継承プロジェクト


「戦場化の前夜」と危機感 石原昌家さん講演 沖縄戦の記憶継承プロジェクト 「非武装・非軍事による平和か、軍事による平和化か、岐路に立っている」と話す講師の石原昌家さん(右)=27日、那覇市の琉球新報社
この記事を書いた人 Avatar photo 中村 万里子

 「沖縄戦の記憶継承プロジェクト―戦争をしない/させないために」(同プロジェクト実行委員会主催)の第2期10回目講座が27日、琉球新報社で開かれた。1970年から沖縄戦体験者に聴き取りをしてきた沖縄国際大名誉教授の石原昌家さんが講師を務めた。戦争に加担した反省や平和を希求する運動から戦後が始まった一方、沖縄戦の資料館で日本軍の兵器が展示される状況を「いまや戦場化前夜だ」と述べ、非軍事による平和や、軍隊は住民を守らないという教訓の重要性を訴えた。約30人が受講した。

 沖縄戦を指揮した第32軍の牛島満司令官が軍官民共生共死を指導し、住民の「集団自決」(強制集団死)やスパイ視虐殺という犠牲を生んだ。石原さんは、32軍司令部壕周辺でも女性が竹やりで突かれて殺害されたとし、県の保存公開について「兵隊のジオラマを並べても軍の目線でしかない。女性がスパイとして殺害されたということを展示しなければ、沖縄戦の実態を展示したことにならない」と指摘した。

 県平和祈念資料館前の広場や「糸数アブチラガマ」に兵器が展示されたことについて、集団的自衛権の行使を可能にした法整備と並行するもので、軍事化を推し進める動きだと危機感を示した。

 戦争直後は新聞人らが反省に立って住民目線で記録し、運動してきたと振り返り、その一つとして53年に学術や経済のトップらで発足した「世界連邦建設琉球同盟」に言及。「戦争が絶え間なく続く今、若い人たちを含め運動を見つめ直してほしい」と期待を語った。今回が第2期最終回で、5月に発表会を予定している。
 (中村万里子)