ジェンダー(社会的・文化的につくられた性差)による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)の影響がうかがわれた、婚姻届の記入例の全国調査。調査を受け、各地の自治体で議論や改善につながっている。3月から新たな記入例を配布している那覇市の担当者は、以前の記入例について「時代に即さない」ものだったと話した。
那覇市ハイサイ市民課によると、昨年の市議会定例会で西中間久枝氏(共産)が全国調査に触れた上で、同市の婚姻届記入例が「夫の氏」にチェックが入っていることを指摘し、改善を求めた。市は議会質問を受け、記入例を全体的に見直した。婚姻後の夫婦の姓を選ぶ欄はどちらにもチェックせず、「いずれかを選択し、しるしをつけてください」との記載にした。さらに、以前の記入例では夫が年上だったのを、夫婦同じ年齢に変更した。
担当者は「前例踏襲で、長年使っていた様式がそのままになっていた。時代に即さない。バイアスがかかるし、直そうということになった」と経緯を述べた。
調査に参加し、県内21市町村分の記入例を集めた眞鶴さやかさん(38)=うるま市=は「確認した範囲では全部夫の氏で、想定はしていたが、がっかりした」と振り返る。那覇市の見直しについて「素早い対応で、さすが県都。他の市町村も続いてほしい」と喜んだ。
調査を企画した一般社団法人「あすには」の教育・研修チームリーダー北村英之さん(41)は、13年前に妻の姓を名乗る「妻氏婚」を選択した。「男性の姓を選ぶ人が圧倒的に多いが、婚姻届の記入例はどうなのだろう」と気になったのが調査のきっかけだった。
活動と報道によって、東京都中野区、千葉県船橋市、兵庫県三木市や同県加西市など、各地で記入例が見直されている。北村さんは「私たちが自治体に直接働きかけたわけではなく、市民や行政が課題だと認識して、改善につなげていることに意味がある」と述べた。
(前森智香子)