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婚姻届の記入例「夫の姓」でいいの? 沖縄30市町村中96%で配布 何気ない偏見、性の格差解消を阻む


婚姻届の記入例「夫の姓」でいいの? 沖縄30市町村中96%で配布 何気ない偏見、性の格差解消を阻む 婚姻届(イメージ)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄県内の自治体が窓口で配っている婚姻届の記入例を調べたところ、記入例がある30市町村のうち96%にあたる29市町村で婚姻後の夫婦の姓について「夫の氏」を選択していることが分かった。ジェンダー平等社会の実現を目指す団体の全国調査を基に、本紙が追加で確認した。「妻の氏」を選んでいる市町村はなく、偏りが見られる。

 日本では結婚時に夫婦が同じ姓にしなければならず、どちらかが改姓する必要がある。婚姻届には、婚姻後の夫婦の姓について「夫の氏」か「妻の氏」にチェックを入れる欄がある。結婚して姓を変えるのは圧倒的に女性が多く、厚生労働省によると、2022年は約95%が夫の姓を選んでいた。

 一般社団法人「あすには」は23年9月~24年2月、市民参加型で全国各地の役所を訪れたり、自治体のホームページで確認したりした。県内では25市町村分を調査した。本紙は4月に那覇市と、あすにはが調査していなかった16市町村に、配布している記入例の内容を電話で確認した。

 41市町村のうち、記入例を配っているのは30市町村。29市町村は夫の氏にチェックをしており、妻の氏を選んでいる自治体はなかった。11市町村は「婚姻届の提出が少ない」などとして記入例を配布していなかった。

 那覇市ではあすにはの調査時点では夫の氏を選んでいたが、団体の調査を知った市議による市議会での質疑を受けて記入例を見直した。新たな記入例では夫にも妻にもチェックを入れずに「いずれかを選択し、しるしをつけてください」との説明を記している。

 全国調査の結果について、あすにはの井田奈穂代表理事は、何気ない偏見の積み重ねがジェンダーギャップの解消を阻んでいると指摘。「姓の統一が強制されるなど、ジェンダーギャップの解消につながらない現状の婚姻制度について、行政・市民が当事者視点で考えるきっかけになることを期待する」と述べた。

(嶋岡すみれ、前森智香子)