「無料塾」夢への一歩 沖縄県事業、1800人受講 大学合格80%超、10年連続


「無料塾」夢への一歩 沖縄県事業、1800人受講 大学合格80%超、10年連続 県の大学等進学促進事業「無料塾」の沖縄本島教室の開講式=4月22日、那覇市の那覇尚学院
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 経済的に厳しい家庭の高校生を対象に、進学を支援する県の大学等進学促進事業「無料塾」は、制度開始から10年間に約1800人が受講し、利用者の大学などへの合格率は10年連続で80%を超えた。事業を受託する那覇市の那覇尚学院で4月22日、本年度の開講式が開かれたが、定員にまだ空きがあり、対象となる高校生らに対し、改めて活用を呼びかけている。

 同制度は、次世代への貧困の連鎖を防ごうと、県が一括交付金を活用し、子育て総合支援事業として2014年度に始めた。利用する生徒らは事業を受託している県内の塾に通って学び、授業料や教材費、運営費は県が負担する仕組み。

 県などによると、専門学校や短大を含む進学希望者が対象だが、近年は大半が4年制大学を志望するという。

 3年生はこれまで1118人が受験し、合格率は毎年80%を超えた。平均は83・8%。琉球大をはじめ県内外の国公立大、私大に進学する。「塾に通えないという理由で進学をあきらめていた子どもに夢や希望を届けられた」と県こども家庭課の担当者。

 那覇尚学院で事業を担当する川辺寿幸さんも「事業が進学の動機付けになっている」と話す。本年度は名護市や宮古島市など9市町で実施する。開講式に臨んだ3年生の女子生徒は「勉強する環境が整っている塾に行きたかった」と現役合格を目指す。40代の母は「塾に通わせるのは難しいと思っていた。ありがたい」と話していた。

 県は医学部など難関大を目指す生徒を対象にした進学チャレンジ事業も5市で実施する。いずれも対象は(1)児童扶養手当受給世帯(2)住民税所得割非課税世帯(3)里親家庭か児童養護施設に入所している高校生―などが条件。問い合わせは県こども家庭課、電話098(866)2174。 (宮沢之祐、高橋夏帆)