共同親権の導入を柱とした民法改正案が17日の参院本会議で可決、成立した。改正案では離婚する際に父と母が協議し、共同親権か単独親権にするかを協議しなければならない。そのため、県内のドメスティックバイオレンス(DV)被害者や支援団体からは被害者と加害者が接点を持たざるを得なくなることを危惧する声が上がる。不安を抱えるひとり親世帯は少なくない。
改正案が施行されれば、すでに離婚済みの父母も家裁に共同親権への変更申し立てが可能になる。DVや虐待の恐れがあれば単独親権にすると規定するが、家裁の判断が機能するかどうかが懸念されている。
本島中部に住む40代の女性は、数年前にアルコール依存のある元夫のDVから逃れ、2人の子どもを連れて家を出た。精神疾患があり就労できないため児童手当と生活保護で暮らしをつないでいる。元夫からの養育費はない。「やっとの思いで離婚したのに。これでは離婚前と変わらなくなるのでは」と法案成立に信じられない思いだ。
調停で解決できず訴訟で争った末に、中学生と小学生の子どもは元夫と月2回の面会交流を行っている。女性は直接連絡をとることはないが、子どもたちを通して元夫が探りを入れてくる。下の子が精神不安定になり、学校に行きたがらなくなっている。「子どもへの影響が心配だ。円満離婚の場合だけ共同親権にしてほしい」と求めた。
生活困窮者の連帯保証人や緊急連絡先の引き受けなどを担ってきた一般社団法人ウパンナ(北谷町)代表理事の和田聡さん(47)の元には、不安を抱えるひとり親世帯からの相談が多く寄せられている。
和田さんは「今回の制度は円満離婚の場合は有効だと思うが、わたしたちには不安の声が寄せられている」と語る。ウパンナは現在、DVから逃れてきたひとり親世帯がアパートを借りる際の連帯保証人などを引き受けている。
「(加害者から)どうにか逃げたあとに、慣れない場所でぎりぎり子どもたちの世話をする。やっと落ち着いた環境になったのに共同親権を盾に加害者からの介入の口実を与えかねない」と懸念した。
(慶田城七瀬、吉田健一)