保育園や学校など特定の社会的場面で話すことができない場面緘黙(かんもく)について知り、必要な支援などについて学ぼうと、19日、糸満市のシャボン玉石けんくくる糸満大ホールで「場面緘黙講演会in沖縄」(沖縄本島かんもく親の会、県発達障がい者支援センターがじゅま~る共催)が開催された。
講師は当事者や家族、支援者らをつなぐ団体「かんもくネット」代表で、公認心理師・臨床心理士の角田圭子氏が務めた。角田氏は「話せないことだけに注目せず、困難さを知って、必要な支援をしていくことが大切だ」と訴え、具体的な支援方法などについて紹介した。保護者や保育、教育、医療関係者など約500人が熱心に耳を傾けた。
場面緘黙は医学的には不安症群に分類され、出現率は約500人に1人。特別支援教育では「情緒障害」とされ、発達障害者支援法の対象になっている。発症の要因はさまざまで(1)生まれつき繊細な不安気質(2)親も不安症があることが多い(3)環境(園・学校や家庭)の影響(4)神経発達症の一症状―などがある。
診断基準は家庭などリラックスできる場面では適切な言語能力を示し、年齢相応に双方向会話ができるのに、学校などの特定の社会的場面では、少なくとも1カ月話せないことなど。
多くの場合は人と関わったり、人に見られたりする場面だと緊張し、「変に思われたらどうしよう」といった不安のために、他の子と関わることを避けてしまう社交不安症を併せ持つことが多い。
海外の研究では自閉スペクトラム症(ASD)などの神経発達症を併せ持つ場合が6割で、言語理解や表出に苦手がある場合が5割とされている。また感覚過敏や運動が苦手な場合など他の困りごとが隠れていることもあり、早期の個別指導や療育が有効とされている。
望ましい対応としては(1)安心できる環境を整えるため、園や学校と家庭が協力して通学路やトイレ、教室や持ち物などに少しずつ慣らしたり、物事の見通しをもたせたりする(2)ポジティブな声かけをする(3)個別の指導計画を作成し、合理的配慮や発話への支援をする(どんな方法ならできそうか話し合うなど)―がある。
角田氏は発話のための取り組みとして、不安が少ない場面から順に発話のチャレンジをする「段階的エクスポージャー法」や、話せる人と会話しているところに、まだ話せない人を徐々に入れていく「フェイドイン法」などを紹介した。
角田氏は「家庭では普通に話しているので保護者は気づきにくく、園や学校の先生が気づくことが多い。早期の発見、対応が大切なので、早く保護者に伝えてあげてほしい」と呼びかけた上で、「家庭と協力しながら、子どもに合わせて楽しく発話を増やしていくことが重要だ」と適切な支援の必要性を訴えた。
(嶋岡すみれ)