陸上自衛隊与那国駐屯地が、開設した2016年から、法的根拠なく撮影やプラカードの使用などを禁止する看板を公道に向けて掲示している。駐屯地は本紙の取材に対し、看板に示す行為を控えてもらうよう「お願いするため」と文書で回答した。掲示は今後も続けていくという。識者は「法的根拠なく市民の表現行為を制限するのは不適切だ。看板は撤去すべきだ」と批判した。
駐屯地側は施設の柵から公道に向け、8カ所に看板を掲示している。国有財産法第5条と防衛省設置法第4条第1項第12号で認められている施設管理権等を根拠に、掲示しているとした。だが、施設内ではない、公道での市民の行為は自由だ。住民からは「表現の自由の制限ではないか」と疑問視する声がある。
表現の自由などに詳しい専修大教授の山田健太氏は「憲法で保障されている表現の自由に抵触しかねない行為だ。漫然とした安全確保等によって制限することは許されない」と指摘した。その上で「何を根拠に規制しようとするのか明確に説明する義務がある」と求めた。
駐屯地側は「表現の自由を制限する意図はない」とし、「自衛隊が管理する地域以外で国民の行動を強制することはない」と回答したが、答えと看板の内容が矛盾している。今後の掲示については「自衛隊の活動の特殊性を踏まえた、看板の掲示の趣旨をご理解いただきたい」とし、掲示を続ける姿勢を示した。
公道からの撮影をやめるよう求められたことがあるという町在住の70代男性は「法的根拠もなく、まずい看板だ」と憤る。男性によると、現場の自衛隊員も法的根拠はないことは認めており、「お願い」で撮影禁止を求めて来たことがあったという。駐屯地側が今後も掲示を続けるとしていることに対して「おかしい。国会でも議論しないといけない問題ではないか」とくぎを刺した。
(照屋大哲)