沖縄子ども調査報告書で、物価高騰により増えた支出額は、所得階層による差はほとんどないことが浮き彫りになった。食費や住居費、教育費などの「必需品」は価格が上がっても買い控えることが難しいためだ。増えた支出額が同じであれば、低所得世帯であるほど負担は重くなる。自由記述では「助けてください」との悲痛な訴えも書き込まれており、孤立する世帯に手を差し伸べる柔軟な施策が急務となっている。
増加した月ごとの支出額について「2~3万円未満」と回答した保護者は全体の28・7%を占め、最多だった。「減った」との回答はほとんどなく、1~4万円未満の増加となった世帯は65・1%に上る。
「子どもが4人いる」「元夫の借金を返せていない」など一般層からも困窮をうかがわせる記述があった。物価高騰で生活が苦しくなったと感じる保護者は9割近い。所得階層による差が見られなかった支出額の分布に、分析した山野良一沖縄大教授は「驚きの結果だ」とし、非課税世帯かどうかが支援の線引きとなる現行の福祉行政の限界を指摘した。
調査では小中学生への医療費助成に感謝の声も聞かれたが、「仕事で(病院に)連れて行く時間がなかった」と支援が十分に活用されていない事例もあった。仕事と生活のバランスを成り立たせる仕組みも不可欠だ。
調査では、近所づきあいの希薄化も指摘された。現在の地域共同体の実態や低賃金、持ち家世帯の少なさなど沖縄が直面する課題を踏まえた包括的な支援が求められている。
(宮沢之祐)