沖縄県が6日公表した2023年度沖縄子ども調査(0~17歳)報告書。21年度調査と比べ、貧困線未満の世帯は減少したものの、物価高騰で支出が増え、生活の苦しさが深刻化している状況が浮かび上がった。食料や衣服を買えなかった経験が「あった」とする回答も増えた。「誰も助けてくれない」「どうしていいか分からない」―。子育ての現場から悲痛な声が上がる。
家の中にある売れそうなものは全て売り、1日の食事は白米やインスタントスープ1杯で済ませた―。那覇市の女性(30)は必死に食いつないだ当時をそう振り返った。3年前に娘を出産。その直後に夫の精神疾患が悪化し、収入が途絶えた。新型コロナウイルス対策の特例貸付制度も利用したが借金が膨らんだ。現在は物価高騰が厳しい生活に追い打ちをかけている。
月手取り9万円
女性は出産後、家計を支えるため働きに出たが、夫と娘の面倒を見るため欠勤が多くなり、一時は月の手取りが9万円ほどに。家賃は3カ月滞納し、電気やガスが止まることもあった。
「子どものミルク、おむつ、寝る場所。これだけは絶対に確保する」と決めていた。だがミルク代は多い時で月約1万円かかる。スプーン1杯分でも節約しようと、基準より水を多く入れて薄めたこともある。そこまで切り詰めないと、家族3人は生きていけなかった。
「自分がふがいなかった。誰も助けてくれないのがつらかったし、孤独だった」
女性は当時を思い返し、目に涙を浮かべて声を絞り出した。
新型コロナ対策の特例貸付制度などによる負債は夫婦で約250万円に膨れあがり、昨年自己破産した。今は生活保護とパートの収入で生活の立て直しを目指している。
県の報告書の自由記述には「ミルクを薄めて飲ませている」「毎月、生活費だけで苦しい」と女性と同じように窮状を訴える声が多く寄せられた。
女性は「困っている人が早く支援につながるような環境づくりが必要だと思う。もっと悪い状況にいる人がたくさんいるって容易に想像できる」とおもんぱかる。
「どう暮らせば」
「子どもへの支援を手厚くしてほしいかな」。本島南部の30代の女性は、2月に生まれた第3子を寝かしつけながら、そう静かに口にした。
妊娠が分かった時は、喜びよりも経済的な心配を先に抱いた。契約社員のため昇給や賞与はない。共働きでも手取りは合わせて月16万円ほど。上の2人は小学生で就学援助を受けている。
「どうやって生活していこう…」
不安が次々に渦巻いた。それでも、おなかの中にいる子を産まない選択肢はなかった。
生まれた男の子はにこにことよく笑う。今は親族や知人からのおさがりの服などを利用し、福祉団体からミルクや食料の支援も受けている。
保育園が決まればすぐに復職し、正社員になれるよう職場に掛け合うつもりだ。
「私も働けば少しは生活が落ち着くかな」。女性は子どもに目をやり、言葉少なに語った。
(嶋岡すみれ)