「投票したい」「いろいろな人が出ているけど、自分で決めたい」―。社会福祉法人、楓葉(ふうよう)の会(沖縄市、島粒希理事長)が運営する生活介護事業所「椛(もみじ)momiji」は知的障がいのある利用者を対象に3年前から模擬投票を実施している。利用者からは選挙権への関心を示す声が上がっている。
椛では施設内に利用者で構成する自治会がある。会長や副会長は選挙で決めており、選挙に向け立候補者の名前や写真、公約が載ったポスターを作る。利用者が投票する候補者を選び、票を投じている。
一方、実際の首長や議員の選挙では、チラシやポスターに記載された公約を利用者が十分に理解できない場合もあり、中立性を意識しながら、職員が公約をかみ砕いて説明している。
大城真実副施設長は「職員が分かりやすく説明しようとする余り、事実と異なってしまわないよう気をつけている」と話す。模擬投票は、利用者が実際の公職選挙の投票で困らないよう、受け付けから投票までの一連の流れを体験させている。実際の選挙では、利用者に対し、職員が撮影した候補者のポスターを見せ、公約を解説する。
予行演習を終えた利用者は特性に合わせて配慮してほしいことを書いたカードを投票所に持参する。
大城副施設長は、代理投票を周知している市町村が少なかったことについて「『選挙に行こう』との呼びかけがあるのに、障がい者だけが置いてけぼりにされている気がする」と残念がる。その上で「障がいがあっても、少しの手助けがあれば投票はできる。社会参画のためにも投票は重要だ」と話した。
(狩俣悠喜)