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「当たり前」の家族に 同性カップル、子育てに思いがけない「壁」<1票への思い 暮らしの現場から 沖縄県議選2024>2


「当たり前」の家族に 同性カップル、子育てに思いがけない「壁」<1票への思い 暮らしの現場から 沖縄県議選2024>2 パートナーシップ制度導入への要望などを語る宮城里沙さん=1日、那覇市泉崎の琉球新報社
この記事を書いた人 Avatar photo 前森 智香子

 困難は予測し、覚悟を決めて家族になった。それでも思いがけない壁にぶつかるたび、もやもやした気持ちが渦巻く。「異性の夫婦が受けている『当たり前』が、私たちも欲しい」。糸満市の小学校教諭、宮城里沙さん(35)は切実に訴える。

 同性パートナーとその息子の3人家族。4月、小学生の息子が体調を崩した。パートナーはその日、仕事を休めなかった。「子どもの看護休を取れるし、私が休むよ」。宮城さんは申し出て、息子を看病した。だが、5月に入って勤務先の学校から「教育委員会に確認したが、里沙先生のケースでは子の看護休は取れないみたい」と告げられ、有給休暇扱いとなった。

 学校行事にはパートナーと2人で出席し、PTA活動にも積極的に参加している。“普通”の異性夫婦の家族と同じような暮らし。それなのに同性婚が導入されていない日本では、法的に家族として認められない。共同で親権を持てず、育児でやりにくさを感じる局面が多い。

 同性婚や国レベルのパートナーシップ制度を導入していないのは、先進7カ国(G7)で日本だけ。同性婚を認めないのは違憲だとする司法判断も出ている。全国各地の自治体で、性的少数者のカップルの関係を公的に認定する「パートナーシップ制度」の導入が進む。県内では那覇市と浦添市が導入しており、県も2024年度中の導入を目指す。導入されれば、那覇や浦添以外でも同性カップルらの関係を婚姻相当と認める証明書の発行が可能となる。

 県のパートナーシップ制度導入方針について、宮城さんは「のどから手が出るほど欲しかった制度で、喜ばしい」と歓迎しつつ、複雑な表情で続けた。「導入されても、いま育児で直面している問題は解決が難しい。さらに進んだ『ファミリーシップ制度』も欲しい」。パートナーの子など近親者も家族として登録できる制度で、県内では那覇市が導入済みだ。

 宮城さんは自身の経験を基に、性の多様性について県内各地で講演している。ある講演で女子児童から「なぜ日本は同性同士で結婚できないんですか?」と質問された。考えた末「日本のリーダーたちがそう決めているからだよ。みんな、ちゃんと投票に行ってね」と答えた。

 息子には「悪いことはしていない。堂々と生きよう」と伝えている。困難を抱える当事者の気持ちに寄り添ってくれる政治家が増えてほしい。16日投開票の県議選は、そう願って1票を投じる。

 (前森智香子)