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現場で輝く女性たち 社会の違和感に声上げる 翁長由佳(サンダーバード代表取締役) <女性たち発・うちなー語らな>


現場で輝く女性たち 社会の違和感に声上げる 翁長由佳(サンダーバード代表取締役) <女性たち発・うちなー語らな> 翁長由佳
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 会合の多い父が、朝ご飯だけは家族そろって食べるというルールを決めたのは、私が小学校に入学した頃だった。言い出しっぺだからと毎朝4時に起きて、食卓一杯に愛情と栄養の詰まった小鉢を並べた。高校時代のお弁当も、アメリカ留学前に油抜きダイエットをするためのメニューも、全て父が作ってくれた。

 我が家では、台所に立つ父の後ろ姿が当たり前の光景だった。生前、父は「世の中の男たちが、みんなパパみたいだとは思うなよ」といつも言っていた。どんなに忙しくても家族のために台所に立つ父と、いくつかの「県内女性第1号」の肩書を持つキャリアウーマンの母がいる我が家では、「男だから」とか「女だから」とかの息苦しい言葉を聞いたことがなかった。

 就職して初めての出張の時「こんな小娘を行かせて意味あるのか」と、上司の一人が言った。来客時のお茶くみも、就業後の茶わん洗いも、「これっておかしくない?」の女性たちの言葉が反映されたのは、入社してから8年後の2001年の頃だった。初めての女性部長の誕生に歓喜したり、育休を1年取る後輩の姿に感動したり、職場の理解は深まっていったが、社会の変化の歩みは遅々としていた。昭和初期が舞台の朝ドラのヒロインの奮闘に共感しながら「そうよ、私たちは憤っているのよ」という現実に気づく。あれから時代が流れ、ヒロインの目に今の社会はどう映るのだろうか。

 私が観光危機管理の世界に入ったきっかけのひとつに、先進地フロリダ州の取り組みを沖縄に伝えてくれた女性2人との出会いがある。ハリケーンが頻発するフロリダで、観光地や観光客を守るために先頭に立つ彼女たちの姿は、堂々として光り輝いていた。

 沖縄では、観光も、防災・危機関連も、何かを取り決める会議に並ぶのは男性ばかりだ。だけど実際の現場には、強く、しなやかに活躍する女性たちが多く存在する。上にある世界の違和感に声を上げない私たちが悪いのか、それともそのポジションを獲得するまでの道のりが果てしなく遠いのか、正直よくわからない。いつになったら社会的に正当な男女比率が確立するのかだろうか。会議の席で同席する女性の姿を見て、ほっとしなくなる日はいつ来るのだろうか。そんなもやもやした憤りを抱えながら、今日も私は声を上げる。

 私ってなんか「女性」にこだわりすぎてたよね、と振り返るジェンダー平等な未来のためにも。

翁長由佳 おなが・ゆか

 1970年生まれ、那覇市出身。大学卒業後、沖縄観光コンベンションビューローで26年間従事。2019年6月に県内初の観光危機管理に特化した「株式会社サンダーバード」を立ち上げ、危機に強い観光地の確立を目指し日々取り組んでいる。