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慰霊祭参加者らに聞いた「沖縄が戦場になる可能性は?」 平均は「59%」 自衛隊拡張に危機感 


慰霊祭参加者らに聞いた「沖縄が戦場になる可能性は?」 平均は「59%」 自衛隊拡張に危機感  慰霊の日に合わせ大勢の人が訪れた「平和の礎」=23日午後1時45分、糸満市摩文仁の平和祈念公園(小川昌宏撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 南 彰

 沖縄戦から79年の「慰霊の日」を迎えた今年の沖縄全戦没者追悼式で、玉城デニー知事が自衛隊の配備拡張に「悲惨な沖縄戦の記憶と相まって、沖縄県民は強い不安を抱いている」と訴えた。本紙記者が22~23日に糸満市摩文仁や各地の慰霊祭で遺族らに聞くと、再び沖縄が戦場になる可能性に危機感が広がっていた。

 摩文仁の平和の礎を中心に、県内在住者・県内出身者に「『沖縄が戦場になった』79年前と同じ状態が100%、『沖縄が戦場になる心配が全くない』状態を0%としたら、いまの沖縄の状態は何%ですか」と尋ね、60人から回答を得た。

 「戦争になる前に比べると、今の方がずっといい。民主主義になっただけマシだ」
 90歳の男性は「0%」を選んだ。小学校教諭女性(23)は「国民の過半数が戦争に反対する中では、5年以内に戦場になるような心配はないかなと思う」と言って「20%」と答えた。

 ただ、戦場になる心配が少ない「0%」~「20%」と答えた人は60人中5人。全体の平均は「59%」と「50%」を上回った。沖縄戦の状態に近づいている県民の意識を示す結果となった。

 「30%」~「50%」を選んだ人は、中国や北朝鮮、ロシアの脅威への不安を口にする人が多かった。
 会社員の男性(45)は「30%」か「40%」で悩んだ。「台湾有事が心配だ。中国のことを考えると上の数字になるし、米国が守ってくれるなら下の数字になる」

 「50%」を選んだ40代会社員女性は「世界情勢が不安定すぎる。『もしも』がないとは言えない状況」と語った。

 年代による回答の差はあまりなかった。差が出たのは「南西シフト」で進む、県内の自衛隊増強への見方だ。自衛隊増強に「賛成」「どちらとも言えない」という人の平均はともに「48%」だったが、「反対」の人の平均は「67%」だった。

 「60%」より高い数字を選んだ人の回答からは、県内の軍事基地化への危機感がにじんだ。

 製造業女性(42)は「現状を見ていると(戦争に)巻き込まれるのではないかと思う」。50代福祉関係の女性は「離島が自衛隊の基地になり、国に管理されている」と語った。

 84歳の男性は「自衛隊の増強など戦前と似た状況。沖縄戦のことを知らない世代も多く、軍備化が進むのが心配だ」と懸念した。建築設計士の男性(68)も「台湾有事などで国民があおられ、だんだんと平和が薄れているのではないかと怖い。戦争体験者が少なくなる中、本気で戦争の恐ろしさを訴えないとまた起こる」と危機感を口にした。 

(南彰まとめ)