那覇軍港の浦添移設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きの第一段階となる配慮書の公告縦覧が10日、始まった。エメラルドグリーンに輝く浦添西海岸で同日、マリンスポーツを楽しむレジャーボートや漁船に混じり、沖縄防衛局の調査船が軍港移設に向けた不発弾の磁気探査を実施した。
調査船は日中、浦添西海岸沿いから4キロほど離れた沖合を航行した。ブルーシートに覆われた四角い機材が積まれた船では、乗組員が海中に調査器具をつないだとみられるロープを操作した。
いつも浦添西海岸周辺を散歩しているという70代の男性=浦添市=は「昔は魚に加えてクブシミやサザエ、ウニなどもこの海でたくさん捕れた」と振り返る。軍港移設に向けた海上作業が始まったことについて「軍港を造るにはこの一帯を埋めることになる。残った海の生き物たちも死んでしまうだろう」と寂しげに話した。
浦添西海岸周辺をはじめとする里浜の保全活動に努めてきた銘苅全郎さん(81)=浦添市=は「自然の海を、軍港なんかのためになくすというのは…」と言葉を詰まらせた。「浦添西海岸は、県が都会近くに残る貴重な海を埋めずに市民が利用できるようにしようと、今の護岸の形になった。そこを埋めることになる軍港移設を受け入れるとは、県の政策に一貫性がない」と嘆息した。
「美ら海を未来に残したいうちなーんちゅの会」の大山盛嗣共同代表は配慮書について「国民の意見を聞き、より望ましいものにすべきだ。タウンミーティングや住民説明会をやるべき規模の事業だ」と指摘。防衛省が長文の配慮書をインターネットで公開し、FAXや郵送でのみ意見を受け付けていることに対して「民主主義に背を向けている。『沖縄にはこんなこと(説明会)をやる必要ない』と言っているとしか思えない」と憤った。
(藤村謙吾)