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「命日」の提訴 認可外園で乳児死亡 国の保育政策を問う 那覇 沖縄


「命日」の提訴 認可外園で乳児死亡 国の保育政策を問う 那覇 沖縄 イメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2022年7月、那覇市の認可外保育園で起きた男児の死亡事故で、遺族が異例の国家賠償請求訴訟に踏み切った。

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 提訴日の30日は男児の2回目の命日に当たる。会見では「静かに、おだやかに過ごしたいという気持ちがある」と節目の日での決断に揺れる遺族の心境も明かされた。弁護団からは、訴訟を通じて、事故の責任追及とともに国の児童福祉政策の問題点をも浮き彫りにしていく考えが示された。

 「30年以上同じような状況が続いている。この裁判だけで断ち切ることは難しいが、そこを問うていきたい」。弁護団の大井琢弁護士は会見で、県内では初となる国賠訴訟の意義を強調した。

 大井氏によると、認可外保育園での事故を巡る国賠訴訟は、1970年代から80年代にかけて2件あったが、いずれも国の責任が認定されるには至らなかった。新たに提起した訴訟では、「うつぶせ寝」などの保育事故を防ぐために睡眠中の乳児を観察する「午睡チェック」などの適切な保育を怠った園側の法的責任を追及する。

乳児が亡くなった認可外園のホームページより

 大井氏によると、事故から間もなく園を運営した女性園長から遺族側に謝罪の手紙が「1、2通送られてきた」。ただ、手紙では事故原因には触れず、県警の聴取にも「なかなか応じないと聞いている」とされる。

 事故から2年が経過する中で、遺族側は「まずは民事で責任を認め、罪を償ってほしい」との思いを強くしたという。一方で、大井氏は「安心、安全な保育を受ける権利は憲法25条の生存権に裏打ちされている。その権利の侵害も問う」とも。「認可」「認可外」の区別など、サービスが一律化されていない国の保育制度にも光を当てる方針だ。