岸田文雄首相が突然、退陣を表明した。子育て支援や自衛隊増強などの政策について、計画のずさんさなどを指摘する声も県内から上がった。自民党総裁選の不出馬について派閥裏金事件の「けじめ」と岸田首相が説明したことに対し「裏金問題についてはリーダーシップを発揮できなかったと思う」との指摘も聞かれた。次期首相に対し、国際情勢の安定化や恒久平和、地方の活性化を求める声も相次いだ。
首相が代わっても沖縄に過重な基地負担を押しつける構造は続き、自衛隊も増強されている。市民団体などは、戦争を起こさないための政策や米軍基地から派生する問題への対応を次期首相へ求めた。
遺骨が残る土砂を新基地建設に使用しないよう訴えてきた沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さん(70)は「(土砂の問題は)国際的な人権問題で次期首相も無視できないはず。戦没者を出さないために、台湾有事を強調して増強する自衛隊を県内から撤退させるべきだ」と訴えた。
自衛隊配備にゆれる石垣市で活動する「基地いらないチーム石垣」代表の上原正光さん(71)は「誰が首相になっても一緒」と語りつつも「これ以上沖縄やアジアに軍事的緊張をもたらさないでほしい」と訴えた。
県女性団体連絡協議会の伊良波純子会長は、昨年12月に発生した米兵少女誘拐暴行事件に触れ「裏金問題を背景に政治不信が積み重なり、事件の隠蔽(いんぺい)で不信はさらに大きくなった」と指摘。次期政権に対し「被害者への謝罪やケア、賠償は国の責任でやってほしい。事件が発生したら速やかに県と共有し、公表してほしい」と求めた。
昨年8月、岸田首相と県内観光業関係者で意見交換した「車座対話」に参加した宮古島市観光協会の大泊千尋さん(37)は「(岸田首相は)親しみやすい印象だった」と振り返る。新たな首相には「離島や全国の地方が抱えるさまざまな課題を根本的に解決してほしい」と語った。
(嘉陽拓也、照屋大哲、友寄開、慶田城七瀬)