対馬丸撃沈事件で、姉2人を失った、対馬丸記念会常務理事の外間邦子さん(85)の講話が8日、那覇市若狭の対馬丸記念館であった。外間さんは犠牲となった子どもたちを「平和の守り神として生き続けている」として、現代を生きるわれわれができる「一番の供養は子どもたちを忘れないことだ」と語った。
戦前、笑い声が絶えないにぎやかな家庭だった外間さん一家は1944年8月22日の対馬丸事件で一変した。外間さんの母は戦後、対馬丸に乗船した邦子さんの姉で泊国民学校5年だった美津子さん=当時(10)=と同3年の悦子さん=同(8)=のことを話すことは一度もなかったという。
それでも毎日、仏壇への供え物は欠かすことがなかった。外間さんは「今は子どもを失う母の悲しみを理解できる。今では私も亡くなった姉を最優先に考え、毎日仏壇にお供えする」と語った。
対馬丸事件から80年、記念館開館から20年の節目となる今年。外間さんは「対馬丸の子どもたちとともに平和な未来をつくるのがわれわれの使命。そして記念館は平和のバトンを渡す場所だ」と話した。
講話は対馬丸記念館の20年の歩みを伝える特別企画展「お帰りなさい!対馬丸の子どもたち」の関連企画。22日は生存者の照屋恒さんが「僕の対馬丸体験と戦後」の演題で講話する。
(吉田健一)