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「今すぐ専門家の調査を」那覇市営住宅に基準値超のアスベスト 専門家らが警鐘 沖縄


「今すぐ専門家の調査を」那覇市営住宅に基準値超のアスベスト 専門家らが警鐘 沖縄 イメージ写真
この記事を書いた人 Avatar photo 宮沢 之祐

 「中皮腫などのリスクの早急な除去を」。那覇市の小禄市営住宅の一部の棟で、基準値を超えるアスベストの吹き付け建材が使用されている問題で、アスベスト問題に取り組む関係者からは、危険性を周知せず、対策が後手になっていることに批判の声が上がる。 

 同住宅の10、11号棟の住人に聞くと、市からアスベスト含有建材が見つかり、「除去工事を次年度以降に進める」とのチラシが7月に配られた。除去工事までは天井をシートで覆う「養生」をするとしているが、実施されていない。

 「天井を触らないようにと書いてあったが、その後、何の連絡もない。健康に影響がないのか不安」。戸惑う住人がいる一方、「これまで何もなかったし、心配していない」との声も聞かれる。

 アスベストは悪性中皮腫や肺がんを起こす発がん性があるが、吸引してから発病までの潜伏期間は平均40年前後とされる。息苦しさなど症状が出たときには既に進行し、治療が難しいのも特徴だ。健康被害の啓発キャラバンで7月に那覇を訪れた「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」(東京)の事務局員澤田慎一郎さんは、アスベストの特徴を「この程度なら吸っていても大丈夫という閾値(しきいち)がない」と説明し「だからこそ発病のリスクは除去しないといけない」と指摘する。

 NPO法人中皮腫・じん肺・アスベストセンター(東京)の永倉冬史事務局長は「吹き付け建材の状態を見ないと、はっきりしたことは言えない」としつつ「割れたり、崩れたりしていたら危険度が高い。資格のある専門家による調査をすぐに全室で行い、危険度が高い部屋から除去すべきだ」とする。「調査結果は全ての住人に速やかに開示を」とも強調。「これまでにリフォームなどで天井の建材を取り替えたり、研磨したりした作業員の健康への影響も非常に心配だ」と指摘した。 

(宮沢之祐)

<用語> アスベスト ごく細い繊維からなる天然鉱物で耐火性などに優れているため、長年建材に使用されてきた。粉じんを吸い込むと肺がんや中皮腫を発症する恐れがあり、2006年の法改正で建材の重量0・1%を超えてアスベストを含有する物の使用や販売が原則禁止された。