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誰かの期待した「沖縄」 「本当の言葉」自問する オーガニックゆうき(作家) <女性たち発・うちなー語らな>


誰かの期待した「沖縄」 「本当の言葉」自問する オーガニックゆうき(作家) <女性たち発・うちなー語らな>
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 初回からじーぐいはーぐい失礼します。

 9月21日、TBSの「報道特集」で、昨年のクリスマスイブに起きた少女暴行事件の特集が放送された。2022年まで同番組のメインキャスターであった金平茂紀氏による取材だ。

 特集では、事件と公判の詳細や、上間陽子氏や目取真俊氏へのインタビュー、宮良芳さんによる渋谷の若者へのインタビューなどが紹介され、沖縄の問題が沖縄だけの問題ではなく、日本の問題だとまとめられている。

 誤解されたくないので強調するが、私はこの特集の内容や、金平氏に文句を言いたいわけではない。

 ただ一点、違和感があった。特集のなかで、8月7日の日本外国特派員協会での玉城デニー知事の会見も映し出されたのだが、ここで金平氏は知事にこう投げかけた。

 「玉城知事、すごく優しくなられたのではないですか。沖縄県警が今回取った態度は、県知事に対する裏切りじゃないですか」

 金平氏の質問を解釈すると「沖縄人ならばもっと怒るべきだ」と暗に言いたいのだろう。

 少なくとも私から見て、知事は、批判をトーンダウンしたわけでも、ましてや怒ってないというわけでもないと思う。現に「女性の人権や尊厳をないがしろにする悪質な犯罪で、断じて許すことはできない」と同記者会見で知事は明言している。

 金平氏や在京メディアの期待に応えるならば、県民や玉城知事は、外務省や県警に、もっと激烈に怒るべきなのだろう。例えば1995年の8万5千人が集まった抗議集会のように、県外の人に分かるように怒ることが求められているのかもしれない。

 しかしそうした期待に沖縄の人間が求められるままに応えるのは違う気がする。沖縄の問題を自分ごととして受け止める人たちは、彼らの見たい「沖縄」を知らぬ間に押し付けてはいないか。それは本土が沖縄に基地を押し付けることと、構造的に同じではないか。

 繰り返すが、私は金平氏や内地のリベラルは酷(ひど)いと言いたいわけではない。ただ、悪意のない言葉が、知らず知らずのうちに沖縄人の主体性を奪うことになってしまってはいないかという危機感があるのだ。

 一方で、私のなかにも、玉城知事は間違ったことをしない、批判されてほしくないといった、身内びいきがあることも否定できない。それに沖縄について語る内地の人への偏見やステレオタイプもきっとある。

 だからこそ、沖縄出身者として沖縄について語ることに自覚的でありたいと思う。

 沖縄人の言葉は、本当に沖縄人の言葉なのか。私は、誰かの期待した沖縄を語っていて、それを沖縄について語ると思い込んではいないか。そう自問自答しながら、これからうちなーを語っていきたい。

オーガニックゆうき

 1992年生まれ、浦添市出身。作家。京都大学法学部卒。2018年小説『入れ子の水は月に轢(ひ)かれ』で第8回アガサ・クリスティー賞を受賞。『社会・からだ・私についてフェミニズムと考える本』(社会評論社)に中編小説「龍とカナリア」を寄稿。