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「憲法番外地」から民主主義問う 憲法・自衛隊 「人権獲得の闘い、放棄しない」<衆院選・争点の現場から>4


「憲法番外地」から民主主義問う 憲法・自衛隊 「人権獲得の闘い、放棄しない」<衆院選・争点の現場から>4 住民投票の実施を求め、各地で訴えてきた石垣市住民投票を求める会のメンバー=3月12日、那覇市牧志の浮島ブルーイング
この記事を書いた人 Avatar photo 南 彰

 「大きな飛行機だ」

 子どもたちの声で空を仰ぐと、軍用機が飛んでいった。

 石垣市でマンゴー農家を営む金城龍太郎さん(34)。2023年3月、自宅周辺に陸上自衛隊石垣駐屯地ができた。23日から始まる日米共同統合演習の準備が進んでいる。

 「地域の行事や学校でも自衛隊の方を見かける場面が増えた。駐屯地反対の人を見ていると、モヤモヤとした気持ちを隊員にぶつける訳にもいかず、心がずっと落ち着かない状態だと思う」

 地域住民に「モヤモヤ」を残したのは、自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票が封じられたからだ。金城さんは18年に発足した「石垣市住民投票を求める会」の代表を務めてきた。

 「島で生きる、みんなで考える。大切なこと、だから住民投票」

 民主主義を体現したスローガンを掲げた運動は共感を呼び、市有権者の3分の1以上となる1万4千筆以上の署名を集めた。

 しかし、市議会は住民投票条例案を否決。市は直接請求が地方自治法に基づいており、市議会が否決したため効力は失われたとして、住民投票の実施を見送った。中山義隆市長は「国の専権事項であり、安全保障に影響を与えることについて住民投票はなじまない」と説明した。

 「求める会」が救済を求めた先の裁判所は判断理由を次々と変えながら、最高裁が今年9月26日、訴えを棄却した。「市長に実施を義務付けたとは言えない」(福岡高裁那覇支部)と政治の判断を追認した。

 金城さんは「国防に関しては判断しないで却下という暗黙のルールを感じた」と振り返る。

 10月発売の月刊誌「地平」に「被告、最高裁」という特集が載った。嘉手納基地爆音差し止め訴訟などを闘ってきた池宮城紀夫弁護士(84)はその中で、沖縄の現状を日米安保条約や地位協定が支配する「憲法番外地」と表現した。

 「最高裁に県民の基本的人権を保障せよと訴えざるを得ないむなしさ。それでも、憲法番外地から、憲法が実効し、人権を獲得する闘いを放棄するわけにはいかない」

 池宮城さんの寄稿での訴えだ。石垣の住民投票もその現状を打ち破ろうとする闘いだった。

 衆院選は、政治の憲法への向き合い方をチェックし、政権が任命した最高裁判事を審査する機会でもある。

 住民投票を求めた6年間の活動で政治への期待は揺らぎ、「まだ民主主義が未熟」と感じた。それでも金城さんは静かに考えを巡らしている。「投票は僕たちに与えられた数少ない政治に意見表明できる機会だ」

 (南彰)