女性差別撤廃条約の実施状況を審査する国連の女性差別撤廃委員会が29日に公表した日本政府への勧告を含む「最終見解」で、同委員会が在沖米軍人による性暴力の問題に言及したことが分かった。最終見解は、在沖米軍人による性暴力を「ジェンダーに基づく暴力」と明記し、適切に加害者を処罰する仕組みを講じることや被害者への十分な補償、また2国間の軍事合意の交渉などに女性を参画させるよう促す勧告を盛り込んだ。
同委員会が在沖米軍人による性暴力の問題に言及したのは初めて。米兵の性暴力問題では、米軍に特権的地位を認める日米地位協定が刑事追訴を困難にしている。最終見解は捜査や防止などの仕組みに加え、被害者への補償も整えるよう要請。また独立した人権機関設立の必要性も盛り込んだ。
女性差別撤廃委員会の審査では日本政府からの報告書と当事者の声を伝える「NGOレポート」が重視される。
14日には沖縄の女性たちでつくる5団体が委員との非公式の会合に参加し、沖縄で相次ぐ米軍人による性暴力事件の報告と被害者保護と補償制度の確立、加害者の「不処罰の文化の終焉(しゅうえん)」に向けて取り組むよう求めていた。17日の委員と日本政府との対面審査では、複数の委員から米兵による性暴力や日米地位協定に関する質問があった。
米軍犯罪に関する資料を渡航した女性団体のメンバーに提供し、活動を支えた「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」。共同代表の高里鈴代さんは「沖縄の女性たちが深刻さを直接訴えたことが大きな力になった。法的拘束力はないが公に勧告することで、日本政府は具体的な取り組みを求められた」と指摘した。
(赤嶺玲子)