【ジュネーブ共同=畠山卓也】国連の女性差別撤廃委員会は29日、日本の女性政策について最終見解を公表し、夫婦同姓を義務付ける民法の規定を見直し、選択的夫婦別姓を導入するよう勧告した。
17日に実施の内閣府担当者らへの審査などを踏まえて見解を出した。同様の勧告は4回目。「差別的な条項があるとしたこれまでの勧告に対し、何の行動も取られていない」と指摘し、日本側の姿勢を批判した。
見解では「沖縄の軍事基地で米軍人によって行われた女性に対するジェンダーに基づく暴力」も懸念として指摘した。締約国への勧告として「沖縄の女性と女児に対する性的暴力や、その他の紛争関連のジェンダーに基づく暴力の被害者を防ぎ、捜査、起訴し、加害者を適切に処罰し、十分な補償を提供するための適切な措置を講じること」とした。
皇室典範が男系男子に皇位継承を限る皇室典範の規定にも言及。女性差別撤廃条約の理念と「相いれない」と指摘し、皇室典範の改正を勧告した。
皇室典範を巡っては、前回の2016年審査時、改正勧告を盛り込む最終見解案に日本側が強く抗議し、記述が削除された経緯がある。
人工妊娠中絶についても委員会は、女性に配偶者の同意を求める規定を撤廃するよう法改正を勧告した。人権侵害を受けた個人らが委員会に直接申し立てできるようにする「選択議定書」の早期批准も促した。
健康に関する見解では水道水に含まれるPFASについて「今年9月に測定結果を提出するよう求めたにもかかわらず、水質の安全性に関する最新情報が存在しない」と指摘した。
慰安婦問題にも触れ、被害者らの賠償請求などの権利を保証する努力を続けていくよう日本政府に求めた。
16年以来8年ぶりとなる日本への対面審査が実施され、委員会は選択的夫婦別姓の導入や人工妊娠中絶で配偶者の同意を必要とする規定の見直しなどを取り上げた。日本政府の代表団はこれまでの取り組みを説明し「検討を進める」などと答えていた。
委員会は、女性差別撤廃条約の締約国が実践する差別解消への取り組みを監視。不十分と判断した点については、最終見解に勧告を盛り込む。
今回は、日本のほかにカナダやチリ、サウジアラビアなどが審査対象となっている。