国頭村比地区で10日明け方、集落横を流れる比地川が氾濫した。泥混じりの濁流が集落内に流れ込み、床上浸水や車両の水没などを招いた。水が引いた後、区民らは道路にたまった泥や枝の撤去、住宅内の片付けに追われた。集落から離れた場所にある宿泊施設では、土砂崩れなどの影響で5人が孤立状態になった。
午前5時半ごろ、比地川の増水に気づいた大城健治区長は、区内放送で安全確保を呼び掛けた。しかし区民らが避難する間もなく、激流が集落を襲った。次第に水かさは増していき、区事務所横では2メートル近くの高さになった。
川のそばに住む60代女性は放送を聞いたが、避難する余裕はなく家の中に水が入り込んできた。防災バッグを手に、夫と玄関先に積まれたブロックの上に避難した。自宅は腰の高さまで浸水し、自身の車は目の前で流されていった。
別の60代女性によると、集落に流れ込んだ水は3時間ほどで引いていったという。自宅内は床一面が泥に覆われ、1人では持ち上げられないほど重たいたんすが倒れていた。9日の大雨でも比地川は氾濫し床上浸水しており、なんとか片付けた後だった。「こんなことは初めての経験だ。何から手を付けたらいいのか分からない」と声を落とした。
集落の復旧に追われる区民らは口々に「川のしゅんせつさえやっていれば」と語った。比地川は二級河川に指定されており県が管理する。知花靖村長によると、上流から流れてきた泥などが堆積していることを受けて、県にしゅんせつをするよう要請してきたという。
浸水で住宅に被害を受けた区民ら20人以上は、村が手配した宿泊施設に一時避難するという。大城区長は「区民の人的被害がなかったのが救いだ。だが、復旧には数カ月はかかるのではないか」と述べた。
また、比地にある宿泊施設では土砂崩れなどで道が寸断され、スタッフを含む5人が孤立している。重機などを使って救出を試みたが困難だと判断。11日にも、国頭地区行政事務組合消防本部の隊員が救助に向かうという。10日午後5時ごろ、自民党県連のメンバー5人が、被害状況の視察に訪れた。県議の島袋大会長は「早急な対応を県に訴える必要がある」と話した。
(玉寄光太)