平和学の第一人者で、世界的に「平和学の父」として知られるヨハン・ガルトゥング氏が、17日に死去した。93歳。オスロ国際平和研究所(PRIO)が19日までに発表した。死因は明らかにしていない。
ガルトゥング氏は1930年、ノルウェー生まれ。59年に世界初の平和研究の専門機関としてPRIOを創設し、「平和学」という新たな学問を開拓するなど研究の先駆的役割を果たした。平和を戦争のない状態と捉える「消極的平和」に加えて、貧困、抑圧、差別などの「構造的暴力」がない「積極的平和」の概念を提起し、平和の理解に画期的転換をもたらした。
沖縄を巡る戦争や軍事基地の問題にも深い関心を寄せ、96年10月に来沖した際に当時の大田昌秀知事と対談し、沖縄はアジアの平和交流拠点となるべきだと提起した。
2015年には米軍普天間飛行場の移設に伴い新基地建設が進む名護市辺野古を訪れ、米軍ゲート前で抗議を続ける市民らを激励していた。
18年に琉球新報社が「池宮城秀意記念賞」を贈った「辺野古基地建設反対 海外識者103人声明」の賛同人の一人として、新基地建設に反対する意思を表明していた。
1987年に、〝もうひとつのノーベル賞〟とも呼ばれる「ライト・ライフリフッド賞」受賞。平和学の教授として米コロンビア大学、立命館大学など世界中で数千人の学生に平和学を指導した。著書に「構造的暴力と平和」「平和への新思考」など。(與那嶺松一郎)