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「国特例」偽り融資募る 本島北部の鉱山業者、辺野古工事で10億円以上集める<幻影の辺野古マネー>


「国特例」偽り融資募る 本島北部の鉱山業者、辺野古工事で10億円以上集める<幻影の辺野古マネー> 「内閣府推進国策事業に対する資金調達のご相談」と書かれた資料。極秘の赤い文字がある(画像の一部を加工しています)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【名護】米軍普天間飛行場の移設に伴う沖縄県名護市辺野古の新基地建設などを巡り、「国策事業の推進」をうたう虚偽の情報を元に、本島北部の鉱山開発事業者が複数の投資家らに事業融資の提案をしていたことが30日までに分かった。実際には存在しない「採掘権特例許可」を内閣府沖縄総合事務局から承認されているなどとし、10億円以上の融資を募っていた。この鉱山開発事業者側の関係者は記載内容を認め「口頭では丁寧に説明している。何か誤解させるような意図は全くない」などと説明した。

 琉球新報が入手した事業者の提案資料は「内閣府推進国策事業に対する資金調達のご相談」とのタイトルが付けられ、昨年から今年8月頃までに投資家らに提示したとみられる。事業融資額の元金を保証し、年利15%のリターンがあるなどと記述している。

 資料では、今後沖縄県内で計画している埋め立て工事に対し「確保済みの石材が圧倒的に不足」していると記述され、辺野古新基地建設、那覇軍港の浦添移設などの写真も添えられている。

 その上で、「採掘権特例許可」が与えられているのは「沖縄県北部石材有限責任組合」に属している、同鉱山開発事業者を含めた数社だけだとして「国家から与えられた特例許可により市場を独占できる」とうたっていた。

 一方、資料の中で「採掘権特例許可」を出したとされる沖縄総合事務局資源管理課は、本紙の取材に対し「そういった許可は存在しない」と否定した。

 同組合は2023年4月1日付で解散し、官報にも掲載されている。組合関係者によると、融資を募っている鉱山開発事業者が加盟していた事実はあったものの、総合事務局から「採掘権特例許可」を受けたかどうかについては「そのような事実はない」と回答した。

 組合解散前についても「(特例許可を得ているとして)出資を募るような事実は一切ない」と強調した。

 鉱山開発事業者の経営者は自身は関与しておらず、親交のある税理士の男性が融資を募っていたと説明した。税理士は取材に対し「特例許可」の意味について「組合に所属していないと(土砂を)卸せないとか、新規参入がしづらいところを、特例という言葉で表現しただけだ」などと述べた。

(「幻影の辺野古マネー」取材班)

【記者解説】巨額な基地工事の「利権」が誘い文句に いくつも出回る投資話

 本島北部の鉱山開発事業者が虚偽情報を記した資料を示して、投資家から事業融資を募っていた事実が明るみとなった。基地建設で生じる石材調達などの「利権」を誘い文句に、資金を調達しようと画策する姿が浮き彫りとなった。この提案に対して、実際に資金を出した投資家の有無は不透明だが、本紙は投資トラブルを未然に防ぐため報道に踏み切った。

 「採掘権特例許可」という文言について、実際に融資を提案した税理士は「あくまで施業案がベースになり、組合に加盟しないと(土砂を)卸せない、新規参入がしづらいところを表現した」と説明した。

 ただ、鉱業法に基づく「施業案」は、特定の場所での土砂採掘方法などを許可するものだ。この事業者は特定の鉱山から、土砂を採掘するための施業案の認可は得ているとみられる。一方、融資の提案資料に「国家から与えられた特例許可により市場を独占できる」との文言もあり、施業案の認可と、市場での流通は別の話だ。施業案の認可と、組合への加盟を合わせて「国からの特例許可」と記す事業者側の理屈には無理がある。

 鉱山開発事業者の経営者は、何度か取材する中で「辺野古には土砂を出していない」などと強調していた。だが、提案資料には「国策埋め立て工事」として辺野古新基地建設や那覇軍港の浦添移設を意識した記述が目立つ。

 この開発事業者に限らず、基地建設事業への参入や、砂利や土砂の利権獲得をうたう投資話の情報はいくつも出回っている。巨額の資金が投下される基地建設の背景で、さまざまな思惑がうごめいている。

 (池田哲平)

名護市辺野古の新基地建設が行われる区域。工事で生じる利権をうたい文句にした投資話がいくつも出回っている=9月26日(小川昌宏撮影)