1996年の日米特別行動委員会(SACO)で普天間飛行場の返還が決まって27年がたち、現行計画のV字滑走路の建設が2006年に決まって17年もたつ。これから大浦湾の埋め立て工事が仮に始まったとしても、防衛省は完成まで早くて十数年かかると見通している。普天間返還は早くて合意から40年以上かかる計算となる。軟弱地盤の存在により工期はさらに延びるかもしれない。
国の言う「一日も早い危険性除去」「辺野古が唯一の選択肢」とは何と空疎な言葉か。強弁するだけで県が求める「対話による解決」には応じない。県の主張と国の主張、それらを両立させ、国も県もともに利益をもたらすような別の選択肢はなかったのか。
県の主張する「対話による解決」とは協議を通して多数派にも少数派にも利益をもたらす「デリバラティブ・デモクラシー」(熟議型民主主義)のことだ。政治的に最も合理的な手法だが、国は代執行という強権的手法でしかこの問題を解決しようとしなかった。
県が一貫して対話による解決を主張したことは将来の世代にとっても意義のあることだ。今の状況は米軍統治下の時、圧倒的多数の住民の民意を強権ではねつけている様子と似ている。一種の軍事的植民地主義が継続しているとも言え、こういう抵抗の歴史を未来の世代に記憶してもらうためにも、県は妥協する必要はないだろう。
(政治学)