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普天間飛行場、移設完了は12年先 続く航空機事故、過去12年で46件 繰り返される恐れ <底なしの海・辺野古大浦湾本格着工>4


普天間飛行場、移設完了は12年先 続く航空機事故、過去12年で46件 繰り返される恐れ <底なしの海・辺野古大浦湾本格着工>4 米軍の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイやヘリが駐機する米軍普天間飛行場=15日、宜野湾市(名嘉一心撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 明 真南斗

 「逃げてください」。米軍普天間飛行場で米軍機が離陸し始めると、沖縄防衛局が配置した監視員が拡声器を使って呼びかけ、体育着姿の児童たちが一斉に校舎に向かう。2017年12月に普天間飛行場を離陸した大型ヘリコプターから窓が落下した普天間第二小学校の運動場での当時の一幕だ。

 事故の後も米軍は学校上空の回避を約束せず、児童たちは米軍機が近づくと運動場から退避することを繰り返した。避難は運動場の使用を再開した18年2月から避難態勢が続いた同9月までに678回に上った。宜野湾市教育委員会の担当者は当時「まるで戦時中のようだ」と嘆いた。

 現在、監視員は配置していないものの、退避のために設置された「避難用工作物」が校内に残されている。現在も学校の上空や周辺を米軍機が飛び交う状況は変わっていない。日本政府は米軍に安全管理の徹底を求めると主張したが、事故は絶えず、21年には民家の軒先に垂直離着陸輸送機MV22オスプレイから水筒が落下した。

 日本政府は「一日も早い普天間飛行場の全面返還を実現する」ために名護市辺野古移設を進めると説明する。だが、軟弱地盤の改良工事を追加するために工期は長引いており、政府の計画通りに進んだとしても、移設完了は12年先だ。普天間飛行場の危険性をただちに取り除くという目的に合致していない。

 過去12年で発生した普天間飛行場関連の航空機事故は少なくとも46件に上る。危険性を根本的に取り除かない限り、同じ「12年」が繰り返される恐れがある。

 政府が辺野古新基地の大浦湾側の工事に着手した10日夜、移設までの間の危険性について見解を問われた木原稔防衛相は「オスプレイの訓練移転などの取り組みを通じて全力で取り組んでいく」と述べるにとどめた。これまでは事故を防止できておらず、県民が実感できる負担軽減につながっていない。

 埋め立て工事の難度を踏まえると、政府計画より長期化する可能性もある。また、米軍幹部が普天間飛行場を使い続けたいという意向を口にするなど、移設したとしても返還されるのかさえ不透明だ。13年に日米両政府が合意した「統合計画」は普天間返還に必要な条件8項目を定めるが、米国政府による代替施設の飛行場認定など日本側の取り組みだけで整わない条件が含まれている。

 辺野古移設に固執することで、政府が工事の加速を正当化するために繰り返す「普天間の危険性除去」から遠のいている。

 過去12年の航空機事故46件は飛行場周辺以外でも発生している。オスプレイは16年、飛行場から約50キロ離れた名護市安部の沿岸部に墜落した。米軍機はその所属基地のみならず、県内の広範囲を飛び交っている。たとえ同じ県内に移設しても危険性はつきまとう。

 (明真南斗)