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沖縄本島、断水回避へ苦肉の策 中部3水源の取水再開へ PFAS濃度の高い比謝川は先送り


沖縄本島、断水回避へ苦肉の策 中部3水源の取水再開へ PFAS濃度の高い比謝川は先送り イメージ写真
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 県企業局は5日の会議で、本島11ダムの貯水率が低下していることを受けて本島中部の3水源から取水を再開する方針を決めた。人体に有害とされる有機フッ素化合物(PFAS)が比較的高濃度で検出され、県民の懸念が大きいことを受けて昨年から取水を停止していたが、最大の優先事項とする断水の回避に向けて「背に腹は代えられない」(県幹部)と判断した。

 企業局の方針では、中部水源のうち、比較的PFAS濃度の低い嘉手納井戸群、天願川、長田川の3水源からの取水再開を先行する。今後も貯水率の低下が続けば、比較的濃度の高い比謝川からの取水再開についても検討するとしている。

 県企業局はホームページで、中部水源のPFAS検出状況を公表している。2023年4~12月の平均で、長田川では1リットル当たり8ナノグラム、嘉手納井戸群で28ナノグラム、天願川で44ナノグラムと、いずれも水源の時点で国の暫定指針値(PFOSとPFOA合計で1リットル当たり50ナノグラム)を下回っている。

 北部のダム水源からの水が合流して希釈され、北谷浄水場に届く時点で10ナノグラム程度となる計算で、そこから北谷浄水場で高機能活性炭を使った吸着があり、さらに低減される。ただ、長田川は取水ぜきの工事をしており、3月上旬以降に取水が可能となる見込み。

 一方、比謝川は同期間平均で138ナノグラムと高い値で検出されている。浄水場に届く時点で暫定指針値以下になるが、企業局では県民の懸念を考慮し、より渇水が進行した段階を目安に取水再開を検討する対象とした。

 PFAS汚染は、米軍基地由来と強く疑われているが、米軍側が立ち入り調査をいまだに認めていないため、原因が究明されていない。企業局は北谷浄水場で活性炭による吸着をしている。企業局は2016~22年度、対策のために防衛省などの補助を除き約12億円を負担した。

 断水を回避するために大きなポイントとなる節水は、効果が現れていない。沖縄渇水対策連絡協議会で節水の呼びかけを決めた1月16日以降も、貯水率低下のペースは変わらず、3日で1%程度の低下が続いている。4~5日に北部で雨が降ったが、貯水率の大幅な回復は期待できない。

 今後は梅雨時までダム貯水率をいかに温存できるかが鍵を握る。比謝川を含めて中部水源からの取水を再開した場合、企業局の試算では貯水率の1日当たりの減少率は現在の0・355%から0・314%に緩和されるが、それでも今後の天候次第で断水の可能性は残る。県関係者は「節水を今以上に呼びかけていく必要がある」として、さらに協力を求めていくと話した。 (沖田有吾)