米海軍のミサイル駆逐艦「ラファエル・ペラルタ」が沖合停泊という形で石垣港に入った。港湾労働者らが安全確保を訴えてストライキを表明するなど地域に不安が広がった。県は米軍に対して自粛を求めたが、米海軍は寄港を強行。日本政府は入港を黙認した。
これまでの寄港は機雷除去などを担う掃海艦だったが、今回のミサイル駆逐艦は主に戦闘に参加する「戦闘艦艇」(防衛省関係者)だ。民間インフラの利用を拡大させる米軍にとっては、戦闘艦艇を沖に停泊する形で寄港できたことで運用の幅を広げられた格好だ。
■2日前
「日米安全保障条約を達成するために重要だ」
林芳正官房長官は7日の記者会見で対応を問われ、米軍が日本国内の港に出入りすることは日米地位協定で認められていると強調した上で容認する考えを示していた。
米軍は2月上旬にいったん岸壁を利用する形で石垣港の使用を申請したが、深さが合わずに市は入港を断っていた。米軍は2月から沖に停泊する形での寄港を計画して業者との調整を進めていたにもかかわらず、市に改めて申請したのは3月7日で、土日を除けば寄港の2日前だった。ただ、中山市長は取材に「法的に問題ない」として寄港を許可した。
全日本港湾労働組合(全港湾)沖縄地方本部は当初、那覇港と石垣港でストライキを実施する方針を表明した。那覇港は管理者である同港管理組合との協議を経てストライキを解除した一方、石垣港については「業界と市の話し合い次第」としてストライキを開始し、港を管理する市が、住民の不安とどう向き合うかを注視する姿勢を示した。
■懸念
日本政府は現在、民間の港湾や空港を自衛隊、海上保安庁が円滑に使えるようにし、優先的に予算付けして整備しようとしている。石垣港も検討対象となっており、大型艦艇が入港可能になれば米軍利用の幅も広がる。地位協定を根拠に日本側から拒否できないというのが政府の立場だ。
防衛省関係者は「ハレーションが大きそうなミサイル駆逐艦を入港させ、運用に支障が出るほどの大きな反発があるか見極めたのだろう。今後、他の種類の艦艇も入れようとするはずだ」と分析し、米軍の行動がさらに活発化するとみる。
県は、米軍艦艇はホワイト・ビーチ地区など県内に集中する米軍施設を使用すべきだとして、民間港湾の使用自粛を求めていた。入港を強行したことを受けて県関係者は「大変遺憾だ」として強い不快感を示した。
県関係者は昨年、14年ぶりに米軍艦艇が寄港したのに続き、今年はミサイル駆逐艦が入港した経緯に触れ「入港する頻度、船のレベルが上がっている。台湾有事を見据え、港の状況確認といった取り組みの一つだろう。今後もこの流れが続きかねない」と警戒感を示した。同時に「あれだけ大きな船が来たら(有事が)現実味を帯び、地域に懸念が広がるのも当然だ」と懸念する。地域住民への配慮を訴えた。 (明真南斗、知念征尚)