会員制の講演会組織「琉球フォーラム」(主宰・普久原均琉球新報社長)の3月例会が13日、那覇市のザ・ナハテラスで開かれた。東京大学大学院総合文化研究科准教授の斎藤幸平氏が登壇し、「人新世の複合危機」をテーマに講演した。
斎藤氏は「複合危機」について、気候変動による干ばつ、食糧危機、経済の失速と失業、右派ポピュリズムの台頭などが絡み合い、社会により悪い影響を与えている状況と説明。国際会議でも「リセット」が叫ばれているが、リセットした先に目指すものの合意がないため、耳障りのいい「自国優先」のポピュリストが勢いを増していると分析した。
気候変動問題に取り組む若者たちの危機感も説明した。「気候変動によって最悪、戦争に巻き込まれるかもしれない」と述べ、物質的な豊かさを重視してきた従来の価値観を変えていく必要性を訴えた。
今後の方向性として「脱成長」「脱植民地化」を挙げた。持続可能な開発目標(SDGs)については、「理念は賛成だが、今まで通りの生活を続けるための免罪符になっている」と懐疑的な見方を示した。
一部の当事者に問題を押しつけるのではなく、「共事者」として考えていく姿勢を提唱。「みんなで一緒に社会をよりよい形に変えていきたい」と締めくくった。
(南彰)