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【記者解説】国策協力で予算配分に差 懸念される政府との距離感 自治体間分断の恐れも 


【記者解説】国策協力で予算配分に差 懸念される政府との距離感 自治体間分断の恐れも  石垣港(資料)=2024年2月、石垣市
この記事を書いた人 Avatar photo 嘉数 陽

 政府が進める「特定利用空港・港湾」指定では、防衛力強化という国策に協力する自治体に優先的に予算が措置される仕組みが問題視されている。「軍民共用」の促進に慎重な自治体は、限られた予算枠内での配分となり、不利益を被る可能性があるからだ。制度への協力姿勢によって不公平な取り扱いが生じれば、自治体間の分断につながる恐れもある。


 政府は県内での「特定利用空港・港湾」の整備について、沖縄関係予算の「公共事業関係費等」の枠内で予算付けした。各種施策を推進するために必要に応じて措置されるのが本来の予算の在り方だ。だがこれまでの沖縄関係予算は、政府との距離感が予算額に影響していると捉えられかねない経過をたどっており「特定利用空港・港湾」の指定を巡っても自治体ごとの対応の違いが予算配分に影響を与える懸念は拭えない。

 今回の指定の対象で、自治体が管理する空港・港湾では石垣港が指定された。中山義隆石垣市長は「港湾の方は先に手を付けていただきたい」と強調するなど、早期の機能強化をかねてから国に要請していた。


 国の予算で港を大規模改修できる石垣市にとっては、豪華客船など大型船が入港できる水深が確保されるなど港湾のさまざまな事業を推進する利点もある。港湾整備で大型客船や貨物船が入港できる水深が確保されることで、人流・物流の活発化や観光業の活性化など、市民生活の向上につながる施策を展開しやすくなるといった市政運営上のメリットもある。

 一方で、防衛力強化ありきのインフラ整備の前例がつくられたことで予算編成の防衛色が強まり、自治体間や国との溝を深めたままの協議が続く懸念もある。 (嘉数陽)